Blooming Wooing Audio

オーディオや音楽についてのblogです。手持ち機器のレビューやイベント参加感想など。

KSE1500のノズルが破損したので修理しました。

Shureの静電型イヤホン、KSE1500をまた修理しました。

 

実はKSE1500は1年半ほど前に、アンプ部分のバッテリーが劣化したため、メーカー修理をしたことがあります。そのときは結構な修理費を取られてしまいました。

今回はノズルが折れてしまったため、eイヤホンさんにお願いして、修理していただきました。

 

経緯

普段、ポータブルオーディオ環境はデジカメ用のケースに入れて持ち歩いています。プレーヤーとKSE1500のアンプを粘着シートで接着しています。また、イヤホン部分については取り外して、ケースのポケットに入れています。

 

ある日、聴こうと思ってイヤホンを取りだしたらノズルがポッキリ折れておりました。

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見れば判るとおり、根本からポッキリです。気が付いた瞬間、膝から崩れ落ちそうになりました。

 

修理するに当たって考えた事

さて、とにかくこのままにしておけないので修理をどこかに依頼することにしました。最初はメーカー公式の修理に出そうかと思ったのです。が、ちょっと事前に調べてみたところ、ノズル折れは本体交換で15万円くらいかかるようだ、ということがわかりました。

15万円となると、KSE1200(イヤホン部分は1500と同じ物)の新品が買えてしまう値段です。

 

ということで、メーカー修理でなくて、もっと安い方法を探すことにしました。普通だったら、他で修理をするとメーカー保証がなくなって公式修理が出来なくなる危険性がありますが、今回はいざとなったらKSE1200を買ってしまえば良いですからね。

 

eイヤホンでの修理

ということで調べてみたところ、eイヤホンさんのSNSで、Shureのイヤホンのノズル折れ修理事例が出てきました。載っていたのはSEシリーズだったのですが、問い合わせてみたところ、KSE1500でも対応いただけるとのこと。早速、最近移転した秋葉原の店舗に持ち込んで修理していただきました。費用はたったの3000円でした。お昼頃に持ち込んで、2時間ほど秋葉原をぶらぶらしていたら、修理完了の連絡が来たので取りに行きました。

 

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修理して頂いたのが上記の写真です。単に折れたノズルを接着するだけではなく、レジンで根本を成形してくれたそうです。細かく左右を比べてみると、たしかに根本がちょっと膨らんでいるのがわかります。

 

イヤーピースをつけて聴いてみたところ、まったく問題なく聴くことができます。左右の音質差もまったく感じられません。修理から1ヶ月ほど使っていますが、しっかりと固まっているようでまったく問題ありません。

 

まとめ

今回、eイヤホンさんにお願い出来て、本当にありがたかったです。費用も安く時間もわずか数時間で修理完了し、出来上がりも完璧です。

高級イヤホンはかなり高価なものですし、壊れやすいものでもあります。こうした修理サービスを展開してくれることは大変ありがたいです。

 

E5 studioとiFi iESLを繋げてみました

さて、前回記事にしたとおり、E5 studioを導入しました。ということで、E5 studioからiFi iESLに繋げてみた、というレビューです。

 

iESLと静電型ヘッドフォン

すでに何度か書きましたが、私がメインで使っているのはSTAXのSR-009というヘッドフォンです。これは静電(コンデンサ)型と呼ばれるもので、普通のヘッドフォンと同じようには使えません。必ず、専用のドライバ(アンプ)が必要となります。

 

STAXはヘッドフォンもドライバも両方出しているので、基本的には一つずつ買って組み合わせることになります。私も以前はSRM-727Aというドライバをボリュームパススルーで使っていました。

 

その後、iFiからPro iESLというモデルが出ました。これが「エナジャイザー」という、静電型ヘッドフォンを鳴らすためのドライバです。機能としては、「通常のアンプやヘッドフォンアンプから出ている信号を基に静電型ヘッドフォンを鳴らす」ということができます。ただボリュームがついていないので、音量を変えることは出来ません。(入力インピダンスを変えたりAC Terminationを変更したり、という機能はあります)

 

SR-009での音質

ということで、音質レビューです。

環境としては、PC → DA-06 → E5 studio → iESL → SR-009 となります。基本的には、P-700uとの比較になります。

 

P-700uの時点で大変素晴らしい音だったのですが、さらにブラッシュアップされました。P-700uはラックスマンらしく、とても綺麗な音色と柔らかな音場の表現が魅力ですが、E5 studioにすると、もう少し音色がくっきりして輪郭がなぞられたような印象です。帯域の広さは本当に素晴らしく、超低域から高域までバランス良く出ます。SR-009は低音があまり目立たない機種だと思っていたのですが、この構成だと結構はっきり聞こえて来ます。

また、音場の表現は大変明確で奥行きが感じられます。一つ一つの音色の美しさは言わずもがなで、静電型の実力が感じられます。

全体的に、ひとつレベルアップしたような印象です。P-700uはアンビエントな感じがしてとても魅力的ですが、E5 studioはもうちょっと現代的というか、音楽全体を楽しみながらも、一つ一つの音色がより明確になっているような感じです。

 

ところで、ちょっと面白いことを発見しました。iESLはインピダンスを16Ω~96Ωで選択出来るようになっています。普通のヘッドフォンアンプの場合、繋ぐ先の抵抗値が大きくなるほど、音量は小さくなっていくはずです。

ところが、E5 studioの場合、インピダンスを変えても音量は変わりません。(音は変わりますが)これは、E5 studioの「電流駆動」回路がインピダンスの影響を受けないように設計されているからではないかと思います。

 

接続ケーブルについて

iESLの入力なのですが、同じiFiのPro iCan以外からの接続だと、バランスヘッドフォン入力(4pin XLR)かスピーカー端子からの入力です。ヘッドフォンを鳴らすので、ヘッドフォンアンプ(E5 studio)からの信号を4pin XLRで受けたいのですが、一つ問題があります。

E5 studioは4pin ヘッドフォンアウト、iESLは4pinヘッドフォンイン、です。なので「4pinXLRのオス → 4pinXLRのメス」というケーブルが必要なのですが、そんなケーブルは世の中にほとんどありません。そもそも4pinXLRって、ここ5年くらいバランスヘッドフォンで見るようになったくらいで、他の用途にほとんど使われていないですからねえ。。。

 

ということで、ネットで探してみても、ほとんど見つかりません。2000円くらいのスタジオ用のが唯一見つかったのでこれを購入しつつ、AVCTのST-1Q-MK2にコネクタを半田付けして作って見ましたが、どうにも満足する出来になりません。前者は明らかに腰高で低音が出ていません。後者は低音は良いものの、中域と高域の境目くらいに、妙に引っ込んだ帯域があり、不自然な感じを受けました。

 

そこで、E4UAさんに相談して、ケーブルを作って頂きました。用途や接続機器を説明したところ、線材やコネクタについてアドバイスをいただきまして、発注しました。3週間ほどで届きましたが、大変素晴らしい出来でした。帯域の広さ、バランスの良さ、ノイズ感の少なさ、とどれをとっても素晴らしいです。銀メッキ線材ということで、もう少し華やかな感じになるかと思っていましたが、以外と柔らかい音色でした。また、物理的な意味で思ったより線が細かったです。普段、ヘッドフォン用のケーブルを作成頂いているので細い線を使っているのだと思いますが、機器間接続なので取り回しを考える必要がないため、もしかしたら他に線材の選択肢があったかも知れません。

 

 

静電型以外のヘッドフォン

実は、iESLには普通の4pin XLRの出力もついています。ここには普通のダイナミック型などのヘッドフォンも繋ぐことが出来ます。4pin XLRで受けて、それを4pin XLRで出していることになるわけですが、単なるパススルーというわけではないようで、明らかに音が変わります。

PS2000eを繋いでみました。E5 studioに直で繋いだときに比べると、かなり引き締まったような印象を受けます。よく言えばくっきりしたような、悪く言えばちょっとキツく聞こえます。どちらが良い、というよりは好みの問題でしょう。

 

まとめ

そもそも、iESLを買う人は限られていると思いますし、ほとんどの人はPro iCanとセットで使っているかと思います。

けれど、iESLというかなり特殊な機器を使い倒すことを考えた場合、それ以外のヘッドフォンアンプとの接続、ということも考えて良いと思います。特に、静電型という、ドライバの選択肢が少ない中で、お気に入りのヘッドフォンアンプの個性を静電型のヘッドフォンと組み合わせられる、ということは(かなりマニアックですが)とても楽しめることだと思います。

E5 Studioのレビュー(Re・leaf)

Re・leafのヘッドフォンアンプ、E5 Studioのレビューです。今回は、純粋にヘッドフォンアンプとしてのレビューです。

 

Re・leafは日本のメーカーで、オーディオ製品以外も超高級な製品を色々出している会社です。2月に、アウトレット品がセールになっていたので、つい買ってしまいました。

 

Re・leafとE5 Studioについて

Re・leafについて知ったのはヘッドフォン祭に出ていたブースでした。最初はE1という、音は無茶苦茶良いけど値段もとんでもないアンプ、という印象でした。その後、E3 Hybrydという手の届く価格帯の製品が出てきて、その音に非常に良い印象を持っていました。

 

E3 hybridは「電流駆動」と「電圧駆動」という2種類の回路を持っています。メーカーとして押しているのは「電流駆動」の方とのことで、たしかにとても良い音がします。しかし、「電流駆動」はかなりヘッドフォンを選びます。物によっては音割れする機種があるらしく、そうしたヘッドフォンは「電圧駆動」で対応するように、とされています。

 

E5 studioは、E3 Hybridの「電流回路」のみを取りだし、一部部品を変更した製品ということになります。なので、前述の、使うヘッドフォンを選ぶ、という点については解決していません。

 

というだいぶ癖のあるヘッドフォンアンプなのですが、まあ、苦手なヘッドフォンはP-700uで鳴らせば良い、と割り切って購入してしまいました。ヘッドフォン祭で聴いた音にとても惚れ込んでおりましたので。

 

外観とスペックと電源アダプタ

Studio向けと言うことで、外見は大変素っ気なく、真っ黒な業務用機器、という印象です。個人的には、以前持っていた、LEHMANNAUDIO のBlack Cube Linear PROを彷彿とさせます。

端子としては、ヘッドフォン出力にXLR4pinのバランスと6.3のアンバランス。アンバランスを挿していると、そちらが優先されます。

入力はXLRのバランスとRCAのアンバランス。背面に入力とゲインの切り替えスイッチがあります。機能としては単なるアナログバランスヘッドフォンアンプですね。また、15Vの電源アダプタが付属しています。この値段の製品で、電源アダプタが外付けなのは珍しいですね。

 

付属の電源アダプタなのですが、特にオーディオ向けの製品でもなく、普通にその辺で2000円くらいで売っているアダプタです。改善の余地がありそうなので、またシンガポールからiFiのiPowerX(15V)を個人輸入しました。これはかなり効果があったような気がします。アンプの値段が値段なので、ここはもう少しどうにかならなかったのか、と思いますが……。

 

環境とバランス端子について

さて、肝心の音の感想です。構成としてはPC → DA-06 → E5 studio → ヘッドフォンとなります。USBケーブルはiFiのGemini、インターコネクトケーブル(バランス)はST-1Q。電源はAray 6 MkIIから取っています。

 

ヘッドフォンですが、今までP-700uを使っていたため、バランス接続はXLR3pin×2でした。E5 studioはXLR4pinなので、プラグをせっせと付け替えました。 iHP-4F3を持っているので、P-700uにXLR4pinのヘッドフォンを繋ぐこともできますからね。

 

アンバランスのPS2000eについては、E4UAというプロの方にお願いしました。リケーブル可能な機種なら、失敗してもケーブルだけ付け替えれば良いので気楽ですが、直付けのはちょっと自信が無いので………。ケーブルの中がどうなっているのか、切ってみないと判らないですしね。

しかし、結果としてこれは大正解でした。そもそもXLR4pinは端子の候補がほとんど無いうえ、聞き比べる機会がありません。ネット上でも比較記事などは見つからないのです。今回、E4UAさんにお願いしたことで、アドバイスや提案などを頂き、純銅プラグの端子にすることにしました。

 

また、HD800(リケーブル済み)は、プラグを切り落とし、NEUTRIKの4pinの端子に自分で半田付けしました。K701も今度付け替える予定です。Edition9は……、これも直付けですし、とっくの昔に販売終了しているので悩んでいます。

 

音質について

さて、肝心の音質です。基本的にはP-700uとの比較です。

基礎性能としてはもの凄く高いものがあります。帯域バランスはかなりフラット。特筆すべきは帯域の広さです。超低音から超高音までしっかりと出ます。音色はかなり細かくキレイにでます。一つ一つの音がとても表現豊かに出てくる印象です。P-700uと比べると、音の輪郭がよりくっきりしている印象。制動がはっきりしていて、出るときは出る、止まるときは止まる、ということが正確に行われていることが解る感じがします。

 

PS2000eで聴くと、暴れん坊だったヘッドフォンが、魅力はそのままにしっかりと制御されているような印象がります。特に低音は素晴らしくなり、量感を持ちながら、それでいてタイトなベースラインを聴かせてくれます。一番の魅力である中音域はより生き生きと聞こえて来て、とても楽しく音楽を楽しめます。高域も煌びやかでいながら耳に刺さるようなこともなく、とても綺麗に聞こえて来ます。ポップスやジャズを聴くのに本当に素晴らしい環境になります。

 

HD800にすると、よりモニタライクな音になります。レンジと音場の広さが際立ち、とても見通しが良い音楽になります。オーケストラの一つ一つの音がはっきり聞こえてくるような、空間表現がとても魅力的です。

 

まとめ

E5 studioはかなり癖がありますが、とても良い音を出してくれるアンプです。特に、帯域の広さとバランスの良さは他の追随を許さないものがあります。音色に関してもとても魅力的にヘッドフォンの良さを引き出してくれます。この音色が、(スタジオ向けだからか)この値段で聴ける、ということは大変なことだと思います。

ただ、電源アダプタは変更した方が良いと思います。

 

後日、E5 studioからiFi iESLに繋いだときのレビューもします。

 

PS2000eのレビュー(Grado)

GRADOのフラグシップヘッドフォン、PS2000eのレビューです。こちらについてはバランス版ではなく、アンバランス端子(6.3mm)のものになります。

 

GRADOはアメリカのヘッドフォンメーカーです。古き良きガレージメーカの流れを汲む、よく言えば長閑な雰囲気を漂わせるブランドです。

PS2000eが出て以来、この強烈な個性を持った音が魅力的だと思って来ました。年末にフジヤのセールでとても安くなっていたので、つい買ってしまいました。(DAPを新調したばかりだったのに……)とはいえ、大型のヘッドフォンを買うのはSR-009以来。2015年の秋ということは、もう5年以上経っていますので、許されるのではないかと……。

本当ならバランス版が欲しかったのですが、価格差には勝てず……。まあ、後でプラグだけ付け替えれば良いや、と購入してしまいました。

 

以下のレビューはDA-06からP-700uのアンバランス端子に繋いで聴いたものです。

 

PS2000eの音質

GRADOの音がします。

GRADOといえば、かなり癖の強い、華やかな音色が特長です。PS2000eもご多分に漏れず、かなり特徴的な音がします。

一つ一つの音色が華やかに表現されるヘッドフォンで、特にメインを張る音が魅力的に聞こえます。ボーカルや、ロックだったらギターソロ、ジャズだったら金管のソロなど、一番聴かせたい音を、一番魅力的に聞かせてくれるイメージです。一つ一つの音色が太く、それでいて華やかに美しく聴かせてくれます。ポップスなどで、声を綺麗に聴きたい、みたいなときには最適なヘッドフォンでしょう。

一方でGRADOといえば、華やかすぎるあまり、ゴチャゴチャっとした感じになる印象があるのですが、PS2000eはあまりそんな感じを受けません。さすがに高級機だけあって、音の分離や細やかさについても高い能力を持っています。とはいえ、フルオーケストラや打ち込み等の、「音が多い音楽」については、耳が迷子になるというか、ちょっとうるさくなってしまうことがあります。どちらかというと、バンドサウンドとか、ジャズ(ビッグバンドを除く)とかの方が得意だと思います。

帯域バランスはほぼフラット。少しかまぼこ気味でしょうか。主役を魅力的に見せるイメージです。音の分離はそこそこ。音場は広めです。

 

PS2000eのつけ心地とか

正直なところ、つけ心地はそんなに良くありません。重いですし、長時間つけていると頭頂部が痛くなります。とはいえ、GS1000などの機材に比べればかなり改善されていると思います。

ケーブルは1.5mほどですが、延長ケーブルとミニプラグ用変換ケーブルがついてきます。ただ、かなり太く、取り回しはあまりよくありません。能率はそこそこですが、音漏れがヒドく屋外で使うのは不可能でしょう。

 

SR-009との比較

STAXのSR-009と比較してみました。とはいえ、SR-009はもちろんコンデンサ型のため、アンプも異なり、単純にヘッドフォンの比較とは言えませんが……。

 

両方とも基礎的なレベルは高いですが、やはりSR-009の方が一枚上手な印象です。特に音の細やかさ、音場の明確さについては差が判ります。音場の広さはほぼ互角。

帯域バランスはSR-009が完全にフラットなのに対し、PS2000eはやや強調される帯域がある気がします。しかしこれは悪いことではなく、PS2000eの、「主役を聴かせる」ことに一役買っている面が有るように感じます。

ボーカルなどの艶やかさはPS2000eに軍配があがりますが、音楽全体の細やかな表現や再現性についてはSR-009といった印象。

 

どちらが良い、と言うよりは正直好みだと思います。全体をフラットに見通すように聴きたいのなら、SR-009。主役のボーカルやギター、金管などをじっくり堪能したいなら、PS2000e、といった印象です。

 

まとめ

とても魅力的なヘッドフォンです。特に、ボーカルものを堪能し尽くしたい、という方には最適なヘッドフォンだと思います。

 

 

HiBy R6ProALのレビュー(Hiby Music)

Hiby MusicのDAP、「HiBy R6ProAL」のレビューです。

 

DAPとして、ここ数年iPod Touchを使っていたのですが、バッテリーが膨張しはじめました。後継として年末にHiby R6ProALを購入しましたのでレビューします。

基本的にはShureのKSE1500との接続して使用したレビューです。

DAP購入に当たって、KSE1500との接続が前提になります。今までは、KSE1500にデジタル入力して聴いていたのですが、今後は前段でDA変換してアナログ入力することを考えました。そのため、3,5mmのラインアウトがイヤホン端子とは別にあることを重視して、機器を選定しました。

 

Hiby R6ProALについて

Hibyはここ数年、ポータブルプレーヤーなどでシェアを広げている中国のメーカーです。ハイエンドという感じではありませんが、そこそこのお値段でなかなかのレベルの機器を出している印象です。

 

R6ProALですが、中々複雑です。元々出ていたR6というHibyの中では中の上くらいのラインのPro版がありました。Pro版ではシャーシがステンレスだったのですが、それをアルミに変えたのがR6ProALということになります。

 

R6ProALはAndroidベースのDAPで、スマホなどと同じくOSはAndroidです。バージョンは8.1なので、最新ではありませんが、そこまで古いものではありません。もちろん、オーディオプレーヤーとしての利用がメインで想定されていますが、ストアアプリからアプリをインストール出来るので、色々なことに使えます。

 

端子としては4.4mmのバランス出力と3.5のミニプラグ。そして3.5のラインアウト/デジタル出力があります。充電とPC接続にはUSB-C。また、MicroSDに対応しています。

 

音楽再生には専用のHibyのアプリを使うのが基本ですが、サードパーティ製のアプリ(HF Playerなど)もインストール可能です。また、Amazon Musicなどのストリーミング系のアプリも普通に使えるので、そちらメインで音質を高めたい人には便利だと思います。

 

また、DAPとしてだけではなく、PCに繋いでUSB DACとしても利用が可能です。

 

 

音質レビュー(デジタル出力)

まずはKSE1500にデジタルで繋いで聴いてみました。ipod touch時代と比べて、トランスポートだけが変わったことになります。

KSE1500には付属品としてUSBケーブルがついているのですが、Type-Cのものはありません。別途OTGケーブルを用意する必要があります。今回、FIIOのFIO-CL6を購入して接続してみました。

 

聴いてみると、ipod touchと繋げたときと、似たような音がします。(DAC以降が同じなので当然ですが)少し音の表現が細かくなったかな、くらいで、あまり大きな変化は感じられませんでした。

 

 

 

音質レビュー(アナログ出力)

今度はR6ProALのラインアウトからKSE1500のアナログイン端子に接続します。KSE1500に短いアナログケーブルが付属しているのですが、L字の方が取り回しが良いかと思い、オヤイデのHPSC-LLを購入して接続しました。

 

一聴して音が変わりました。デジタル出力したときよりかなり音が良くなります。

バランスはかなりロー上がり。低音がかなり強く出ます。それも、ブーミーな無理に持ち上げた感じではなく、かなり低いところから自然に聞こえてくる感じです。イヤフォンとは思えないほど、存在感のあるベースラインが聞こえて来ます。

また、音の細やかさはかなり高いものがあります。一つ一つの音が明確に輪郭を持って聞こえてきます。しかも、ちゃんと音楽として絡み合っているというか、あまりうるさい感じがしません。音場もより明確になり、奥行きもかなり感じられるようになりました。音色としてはややモニタライクなしっかりした音です。ノイズ感も少なく、機器としてのレベルの高さが解ります。

 全体的に、大変満足できる内容でした。

OYAIDE HPSC-LL ステレオミニケーブル

OYAIDE HPSC-LL ステレオミニケーブル

  • メディア: エレクトロニクス
 

 

その他の使い方

もちろん、普通のイヤフォンを繋ぐことも出来ます。3.5mmのイヤフォン端子にK3003を繋いで聴いてみました。SU-AX01と比べています。

こちらもラインアウト同様、かなりのロー上がりです。それでも不自然な感じはあまりしません。音の細やかさ、音場感、音色の綺麗さも、K3003の特長を生かしつつ、かなり鮮明に音楽を描き出してくれます。

 

また、USB-DACとしても使ってみました。付属のUSBケーブルでPCから繋いで、ラインアウトからP-700uのRCAに入れてPro iESLを噛ませて、SR-009で聴きます。普段使っているDA-06との比較になります。

イヤフォンを繋いだときに比べ、そこまでロー上がりな感じはしません。全体的によく聞こえるのですが、やや味気ない印象があります。

ただ、このサイズのポータブル機でここまでの音が出るのか、と驚きました。正直、DA-06との勝負では厳しいですが、価格とサイズが全然違うことを考えると、かなり善戦していると思います。

たとえば、普段ポータブル環境で聴いている人が、家でも大型のヘッドフォン(HD800とか)やスピーカーで音楽を聴きたいとなったときに、専用の据え置きDACを買うのではなくR6ProALをDACとして使う、というのは十分選択肢になると感じました。

 

本当なら、4.4mmバランス出力のレビューもしたいのですが、残念ながら対応するイヤフォンを持っていません。(今までプレーヤーがなかったので当たり前ですが)KSE1500もK3003もリケーブル非対応なので、ちょっとケーブルを買って、というのもなかなか……。HD800をドライブするのは大変だと思うので、出来るとしたらHD25くらいですかね。

 

まとめ

全体的に見て、コストパフォーマンスの良いDAPだと思います。6万前後とは思えないほどアナログ出力の音はとても優れていますし、ラインアウト、バランス出力もあり、端子は豊富です。Androidベースなので、色々なアプリが使えますし、DACとしても利用可能です。

 

音色としてはかなりロー上がりな印象があるので、そこを気に入れば、かなり満足できる機種だと思います。

 

 

pro iESL のレビュー(iFi Audio)

iFi Audioの"エナジャイザー” pro iESLのレビューです。

使用機材は変則的ですが、Luxman P700u → pro iESL → SR-009です。

2020年8月に購入したので、レビューします。

 

 

iFi Audioとpro iESL

iFi Audioは英国のオーディオメーカーでここ数年、特にヘッドフォン周りで存在感を示しているブランドです。比較的手に入れやすい価格でヘッドフォンアンプやDAC、また豊富なアクセサリを展開しています。私も、iLink(DDC)やiUSB Power(USB給電装置)、Gemini(USBケーブル)などを使用しています。

 

そんなiFi Audioの製品群の中で一際異彩を放っているのがpro iESLです。

iFiの中でも幾つかシリーズが有り、"pro"とついているのが据え置きのフラグシップラインです。pro iDSD(DAC)と pro iCAN(ヘッドフォンアンプ)に続いて出されたのが、このpro iESL(エナジャイザー)です。

 

エナジャイザーとは

”エナジャイザー”というカテゴリに入る機器は、世界中どのブランドを見ても恐らくiESLだけだと思います。iFiの製品ページがありますが、これを読んでもなんだか良く解らないのが正直なところだと思います。

ざっくり説明すると、コンデンサ(静電容量)型のヘッドフォンを、一般的なヘッドフォンアンプから駆動するための機材です。

 

コンデンサ型ヘッドフォンとは

ヘッドフォンには大きく3つの種類があります。ダイナミック型、BA(バランスド・アーマチュア)型、そしてコンデンサ型です。

世の中のスピーカーの99%以上はダイナミック型です。BA型は比較的高級なイヤフォンに採用されています。この2種類については、プレーヤーのヘッドフォン端子に繋げば音が出ます。

一方、コンデンサ型のヘッドフォンは専用のドライバを必要とします(一部例外がありますが)。これは高い電圧を常に供給する必要があるためで、普通のヘッドフォンアンプでは駆動することが出来ません。そのため、メーカーはヘッドフォンとドライバを両方開発していたり、セットで販売していたりします。

 

コンデンサ型のヘッドフォンメーカーとしては日本のSTAXが最も有名でしょう。最近は他にも増えてきて、HiFimanやSonoma Acoustics、Mr. Speakersなどが国内でも販売されるようになってきました。また、現在世界で最も高価なヘッドフォンであろうSennheiserのHE-1も、世界最高のイヤフォンだと思われるKSE1500もコンデンサ型です。

 

このように、専用のドライバが必要なうえ、価格も高いものばかりです。逆に言うと、それだけのデメリットがあっても使いたいと思うだけの価値があるのがコンデンサ型です。

詳しい説明は他に譲りますが、コンデンサ型のメリットとして、振動板が薄くできるうえ、固定する必要がないという点があります。

 

コンデンサ型のヘッドフォンとドライバ

このように、コンデンサ型のヘッドフォンでは専用のドライバが必要なため、各社それぞれの形で提供しています。

例えば、STAXはドライバをヘッドフォンとは別に販売しています。そのため、仮にSR-009で音楽を聴こうとすると、別にSRM-T8000や700S/Tなどのドライバを購入する必要があります。2つ買う必要がありますが、自分で好みの組み合わせを選ぶことが出来ます。

逆に、前述のHE-1やKSE1500などはヘッドフォンとドライバが一体になって販売されています。KSE1500はKSE1500のドライバでしか動きません。1つ買えば良いのでお手軽ですが、他に選択肢はありません。

 

pro iESLで出来ること

さて、ようやくiESLの話です。iESLは”エナジャイザー”ですが、これはコンデンサ型のヘッドフォンを駆動させるための機械です。つまり、コンデンサ型ヘッドフォンの前に繋げることで、音を出すことが出来るようになります。

ただ、すべてのコンデンサ型ヘッドフォンに対応しているわけではありません。一口にコンデンサ型と言っても、採用しているプラグや電圧が異なり、対応しているものとそうでないものがあります。

代表的なものだと、STAXSennheiser HE-60/90やMr. Speakersなどが対応しています。しかしKSE1500などは対応していません。

 

前段の方は普通はiFiのPro iCANと繋げるためのHDMI端子を使うのが一般的なようです。他に、スピーカー端子とXLR(4pin)からも入力できます。一般的なRCAやXLR(3pin×2)はありません。そもそも、前段がアンプである必要がありますので、DACなどからではボリュームが取れません。この点は注意が必要です。

 

試聴環境

最初にもちょっと書きましたが、環境としては

PC → Luxman DA-06 → Luxman P-700u → iFi Audio Pro iESL → SR-009

です。

 

普通、iESLを使う人は Pro iCANを前段に据える人が殆どだと思います。しかし私はP-700uの音が好きなので、この形にしました。

 

P-700uにはバランスヘッドフォン出力(4pinXLR×2)がありますので、ここから出力し、iESLの4pinXLRに入力します。そのために、ADLのiHP-4F3を使いました。ケーブルがかなり短いのでギリギリですが、何とか繋ぐことが出来ました。

また、前段がPro iCAN以外の場合、電源アダプタを繋ぐ必要があります。これはiFiのiPower Xというアダプタを使用しました。

 

音質レビュー

以前はSTAX SRM-727をパススルーで使っていたので、主にこれとの比較になります。

 

元々SR-009は基礎性能がずば抜けて高い機種です。精密で綺麗な音色、低音から高音までの自然でフラットなバランス、自然な広がりを見せつつも明確な音場、とすべての評価点に置いて高い能力を示す名機です。

 

iESLを繋いで音を出すと、さらに一皮剥けたような感じがします。特に音色が精緻で明確になります。一つ一つの音の粒が際立つというか、確かな存在感を持って聞こえてくるようになりました。それに伴い音場も明確になり、よりリアリティを持って聞こえて来ます。まさに、演奏者が何をしているのか目に浮かんでくるような感じです。帯域バランスは非の打ち所が無く、どこも無駄な主張をせず、それでいてはっきりと聞こえて来ます。

727使用時と比べて一番大きな違いを感じたのは、音の粒立ちです。一つ一つの音がより明確になり、存在感が際立ちます。727の時点で、十分澄み切った音だと感じていたのですが、iESLに変えると、上には上があるものだと感じさせられました。

 

T8000との比較

実は、購入前にSTAXSRM-T8000とPro iCAN+ iESLを聞き比べる機会がありました。アンプが違うので上記の感想と単純に比較は出来ませんが、ご参考までに。

 

はっきり言ってしまえば、T8000とiCAN+ iESLで優劣をつけるのは不可能だと思います。もちろん、違いがないわけではありません。ただ、どちらが勝っているとかではなく、あくまでも好みの差に過ぎないと感じました。

 

最も異なるのは音色だと思います。T8000は球と石のハイブリッド型だと思いますが、やや真空管っぽさが音色に現れてきます。角が取れたような丸みを帯びた柔らかい音色であり、木管や弦をとても綺麗に聞かせてくれます。そうした、生楽器の響きを重視する場合にはT8000に軍配が上がると思います。

一方、iESLの強みは究極にまで研ぎ澄まされたフラットさです。音色はソースを完璧に再現しており、まったく何も足さず、何も引きません。またノイズ感が少ないことも特長です。こうした厳密な原音忠実性が、目の前で演奏してくれているようなリアリティを引き立ててくれます。

 

実は、個人的に真空管の音があまり好きでは無いのです。そのため、SRM-727からのレベルアップに二の足を踏んでいました。SRM-700Sもあるのですが、値段ほどの価値を見いだせず、改めてiESLを聞いてみたら可能性を感じたため、購入を決意しました。

ただ、もちろんP-700u → iESLという環境で試聴はできないので、かなりのギャンブルスタートであったことは否定できません。しかし現在のところ、大変満足しており決断に間違いは無かったと思っています。

 

購入について

実は今回、iESLはシンガポールから個人輸入しました。Stereoというお店で、現地に住んでいた頃は足繁く通っていました。ちなみに、日本にも送料無料で送ってくれます。今回は在庫切れで3週間ほど待ったのですが、その代わりに、と速達便で送ってくれるなど、サービスはかなり良いです。

代理店の関係か、iFi製品はシンガポールの方がだいぶ安くなるようです。iESLと一緒に、iPower Xという電源アダプタも一緒に購入しました。(これは日本未発売だと思います)

 

まとめ

はっきり言って、マニアの極地の製品だと思います。iESLを購入するモチベーションがある人はかなり限られ、コンデンサ型のヘッドフォンを保有していて、なおかつ現在のドライバからレベルアップを図りたい、しかもお気に入りのヘッドフォンアンプを持っている人、となります。

 

コンデンサ型のハイエンドなドライバとしては前述のSTAX SRM-T8000の他にもBlue Hawaii、FIDELIX のSTACCATO、Woo Audio 3ESなど、少数ですが選択肢がないわけではありません。こうしたドライバを使ってお気に入りのヘッドフォンを鳴らすことも考えました。

 

iESLだけが持つ魅力として、それ自身がアンプでは無く、"エナジャイザー"であるため、手持ちのお気に入りのヘッドフォンアンプの特長を生かした形で自分のシステムに組み込むことが出来ることだと思います。

 

私としては、P700uの音色を大変気に入っており、これでSR-009を聞くことが出来る、ということが大変魅力的でした。

 

ともあれ、音色としてはほぼ自分の理想のものになったと思います。手持ちのコンデンサ型をよりブラッシュアップしたいと言う人にはぜひお薦めです。

 

 

KSE1500(Shure)を修理しました。

Shureの静電型イヤフォン、KSE1500を修理しました。思った以上にコストがかかったので、ちょっとびっくりしました。

 

KSE1500はご存じの通り、世界的に見て最高クラスの音質を誇る製品です。一方、そのクオリティに見合うだけの価格です。ユニバーサルモデルなのに、30万円を軽く超える実売価格であり、名実共に世界最高のイヤフォンの一つです。

 

2016年の秋に購入して以来、愛用してきたのですが、故障してしまいました。故障というか、バッテリーの劣化です。

 

KSE1500は普通のイヤフォンとは異なり、静電型(コンデンサー型)のモデル。静電型の場合、一般的には専用のドライバ(アンプ)が必要になります。(最近、Fitearからドライバ不要の静電型モデルが出たのでびっくりしましたが)

アンプなので、当然電力が必要です。ポータブルなのでもちろんバッテリーを積んでいるわけですが、そのバッテリーが劣化して、充電できなくなってしまいました。使おうとすると、「0%」と表示され、音楽を聴くことが出来ません。ケーブルを挿しても、一向に充電されなくなってしまいました。スマホなんかでは、ときどきある症状ですね。バッテリー切れの状態で数日放置してしまったのが悪かったようです。

 

売店経由で修理依頼を出したのですが、出てきた見積もりに驚愕しました。税込み75000円。相当良いイヤフォンを買える値段です。スマホのバッテリー交換で、こんなに取られるなんて聴いたことがありません。元値が高いから、足下を見られているのでしょうか。。。販売店のレスポンスも悪く、ちょっとがっかりしました。

 

ちなみに、以前AKGのK3003を修理した際には、結局本体交換になったのですが、43000円でした。全交換なら、このくらいかかっても判るのですが、バッテリー交換だけで7万超えは、ちょっとどうかしていると思います。

 

まあ、仕方が無いので支払いをし、無事に戻って来ました。今は普通に聴くことが出来ます。かなり痛い出費でしたが、仕方がありません。まあ、買い直すよりは断然安いですので。