Shure向けのイヤーチップの比較(2019年版)
前回、イヤーチップの比較をしてからかなり新製品も出てきました。そこで、再び比較をしてみたいと思います。
前回比較した際はAKGのK3003がメインのイヤホンだったため、比較したイヤーチップもK3003に対応したものになっていました。しかし、現在はShureのKSE1500がメインになっているため、今回はShure対応のイヤーチップが対象になります。
K3003はノズルの直径が5~6mmでしたが、KSE1500の場合はもう少し細く、3mmより少し大きい程度です。
前回も書きましたが、イヤーチップに関しては使用者の耳の大きさや形に大きく左右されるであろうことから、あくまで参考程度に読んで貰えればと思います。
対象イヤーチップ
写真を撮ってみました。
比較してみたのは、KSE1500に付属していたShure純正のイヤーチップ4種類のほか、DEKONIのGemini、Crystalline Audioのクリスタルチップス、FAudioのInstrumentalとVocal、そしてWestoneのUM56です。
UM56は作る際に内径が選べるので、KSE1500用としてオーダすれば使用可能です。
イヤーチップといえば、Complyが有名です。もちろん、Shure用のモデルもあるのですが、K3003のときに使ってみて、大体分かっているので、今回は外しています。
結果
UM56を使うことにしました。やはり、音質的に見て、頭一つ抜けていると思います。また、装着感も非常によく、長時間つけていても疲れません。一方、遮音性という観点では、そこまでの差は感じませんでした。UM56はかなり高価なものですが、KSE1500なら本体が高いので、十分にペイすると思います。
そこまで費用をかけたくない場合には、Crystalline Audioのクリスタルチップスになるかと思います。もしくは、純正の弾丸フォームも総合的に見て、非常に高いレベルにあるように感じました。
以下、チップごとのレビューを載せておきます。
Shure 三段キノコ(EATFL1-6)
純正の白いキノコ。見た目のインパクトが強い。音場は広い。遮音性が悪い。ハイ上がりで低音が出ない。全体的にスカスカな印象。分解能も悪い。
SHURE 3フランジ・イヤーパッド(3ペア) EATFL1-6 【国内正規品】
- 出版社/メーカー: SHURE
- 発売日: 2009/04/24
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Shure 黄色スポンジ(EAYLF1-10)
純正の黄色いヤツ。サイズは一つ。遮音性はかなりよい。バランスは良い。音場は普通。高音は大人しめ。装着感はあまりよくない。
SHURE イヤーパッド EAYLF1 (5ペア) イエロー EAYLF1-10 【国内正規品】
- 出版社/メーカー: SHURE
- 発売日: 2009/02/13
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Shure シリコン(EASFX1-10)
純正のグレーのやつ。サイズが大中小とある。遮音性がいい。少しロー上がり。やや大人しい印象。抜けはあまりよくない。
SHURE イヤーパッド EASFX1 (Mサイズ/5ペア) ソフトフレックス EASFX1-10M 【国内正規品】
- 出版社/メーカー: SHURE
- 発売日: 2009/04/06
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Shure 弾丸(EABKF1-10)
純正の黒いヤツ。サイズが大中小とある。少しロー上がりだが、下品な感じはしない。高音も音量はそれなりだが、かなり明確でバランスが良い。純正では一番良い気がする。
SHURE イヤーパッド (イヤーピース) EABKF1 (Mサイズ/5ペア) ソフトフォーム EABKF1-10M 【国内正規品】
- 出版社/メーカー: Shure Incorporated
- 発売日: 2008/08/15
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FAudio Instrumental
FAudioの白い方。低音があまりでない。ハイ上がりで高音の抜けがすごくいい。遮音性はまあまあ。音場は普通。ちょっとずれやすい。分解能は普通。
ちなみに、Vocalは写真を撮ったのですが、内径的に填められず、音質を確かめられませんでした。そのうち、K3003でチェックしたいと思います。
Crystalline Audio クリスタルチップス
高音がしっかり抜ける。バランスが良い。低音も量は普通だが、明確。遮音性がいい。音場もまあまあ広い。分解能が高く全体的に好印象。
Crystalline Audio クリスタルチップス イヤーピース Mコア Mサイズ(3ペア) 高音質 高耐久 耐熱 耐汗 遮音性 ノイズ低減 フィット感向上 CT02MM 【国内正規品】
- 出版社/メーカー: Crystalline Audio
- 発売日: 2017/01/27
- メディア: エレクトロニクス
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DEKONI Gemini
潰してから戻るまでが早い。遮音性が割といい。中音が割と綺麗に出る。低音の量は少なめ。高音は量・質共に高い。音場も明瞭。かなり好印象。
DEKONI BULLETZ デコニ バレッツ Gemini 3MM(S) フォームイヤーチップ[イヤーチップ Sサイズ 3ペア]
- 出版社/メーカー: DEKONI AUDIO
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Westone UM56
装着感が抜群にいい。遮音性もいい。ややロー上がり。低音がとても明瞭。高音も抜けがよく、バランスが良い。
Aray6 MKII のレビュー(KOJO)
光城精工のクリーン電源、Aray6 MKIIのレビューです。
オーディオにおいて、電源が音に影響を与えることはよく知られています。機器を動かす電力に多量のノイズが含まれていると、ノイズ感が出たり、音が歪んだり、ひどいときには機器のトランスが唸ったりします。そこで、ケーブルやタップ、コンセントを替えて対策をしている方も多くいます。その、最終的な到達点として、クリーン電源があります。
KOJO(光城精工)はクリーン電源としては老舗の一つで、非常に高い評価を受けているメーカです。今回、その中容量モデルのAray6を中古で入手しました。
Aray6 MKIIのスペック
Aray6 MKIIはリジェネレータ方式といって、コンセントから入力した交流電源を一旦直流に変換し、その後また交流電源に直して出力することで、ノイズを取り除き、きれいな電流を供給しています。
スペックとしては、周波数は60Hz。容量は560VAということで、一般的なアンプやプレーヤをつなぐ分には十分でしょう。ただ、口数が4つなので、複数系統を1台でカバーするのは難しいかもしれません。
音質への変化
早速、つなげて聴いてみました。環境としてはDA-06 → P-700u → SRM-727A(ボリュームスルー) → SR-009Aです。DA-06、P-700u、SRM-727Aに接続しました。
一聴して、ノイズ感が減ったことが判ります。また、音の輪郭がはっきりし、分解能がアップしたようなイメージです。また、定位もはっきりしました。
もともと、SRM-727AとSR-009Aはかなり原音に忠実なすっきりした音が出る環境ですが、さらに一皮剥けるような印象です。
ときどき、電源のノイズ対策をすると、「元気がなくなる」とか「おとなしすぎる」とかいった感想をみることがあるのですが、そんな印象はまったくありませんでした。ノイズ感のざらつきが減る分、澄んだ印象になりますが、音源そのものに近づいただけであって、マイナスなことではまったくありません。
使用中、本体が唸ったりすることもなく、静かなものです。多少は熱を発しますが、大きな問題はなさそうです。
まとめ
全体的に、好印象なアクセサリです。クリーン電源はあくまでも裏方で、スピーカーやヘッドフォン、アンプなどの主役を引き立たせるものです。もともとの機器、音源が持っている底力を引き出す手助けをしてくれている印象です。
お気に入りのシステムを、さらに数レベル引き上げるという点で、Aray6 MKIIはメリットが大きいと思います。ただ、あくまでも裏方なので、アンプやDACなどを一通り揃えたあと、という感じは否めませんが・・。
ただ、一通り揃えたあとには、ぜひ導入してほしい一品だと思います。
ヘッドフォン祭2018秋に行ってきました!
半年ぶりのお祭り、ヘッドフォン祭に行ってきました。会場は変わらず中野サンプラザ。客足は前回とほぼ変わらずと言った感じでしょうか。11時半くらいに着きましたが、一切並ばずにエレベータに乗れました。
今回も何も買わずに帰ってきました。2018年は春も秋も買わなかったことになりますね。だんだん、システムに手を入れる余地が無くなってきたということかも。
では、恒例の視聴レビュー
Ultrasone Edition11
UltrasoneのEditionシリーズの新作です。世界限定1111台とのこと。開放型で、形状が丸いです。今までのUltrasoneのヘッドフォンと比べると、やや落ち着いたデザイン。
開放型らしく、抜けが良い音がします。音色はかなりモニタライクで、分析的な鳴らし方をします。分解能が非常に高く、かなり細かい音まで聞こえます。レンジは広く、超低音から高音までしっかり聞こえて来ます。バランスはややドンシャリ寄り。低音の制動が抜群に良く、これだけでお金を出す価値があります。
Edition9を正統進化させて開放型にしたような音がします。最近、かまぼこバランスでリスニング重視の高級機が増えている気がしているのですが、これは珍しくドンシャリのモニタ寄りで独特な味付けですね。
お値段は20万円を切っているようで、この値段ならかなりお買い得な気がします。ただ、ちょっと癖が強いので、高級機の2台目として最適な感じ。個人的にはかなり欲しいです。
Audiotechnica ATH-L5000
オーディオテクニカの開放型ヘッドフォン新作。こちらは世界限定500台とのこと。Edition11の半分以下ですね。ハウジングにレザーを使用しているとのこと。オーテクは革張りが好きなのでしょうか。
全体的にかなりスタンダードな感じ。帯域バランスがフラットで、レンジの広さも必要十分。音色も綺麗で装着感も悪くない。特に欠点が無いモデルなのですが、どこか凡庸なイメージ。
お値段は50万円前後とのこと。決して悪い機種ではないのですが、このモデルにその金額を出せるかというと、ちょっと疑問かも知れません。とても良い機種だと思うのですが、L5000にしか出せない音色というのがあまり無いような……。
QUAD ERA-1
静電型スピーカーで有名なQUADが出したヘッドフォン。ただし、静電型ではなく、ダイナミックのドライバ。開放型で平面型を採用とのこと。
とてもオーディオ的な鳴らし方をします。かなり重厚な音色でバランスもややロー上がりですが、レンジ自体は下から上までかなり伸びます。分解能もそれなりに高いものを持っている印象。
音楽的に素晴らしい、の一言。音圧というか、音楽が持つ力が全力でぶつかってくるようなイメージ。これが、QUADという老舗のオーディオメーカーの持つ底力でしょうか。分析的に聞いたときに、基礎性能的にもの凄く高いという印象はありませんが、とにかく心地よく聞けて、音楽に感動できるヘッドフォンです。
お値段は20万円弱。この値段でも安すぎると思えるレベルのヘッドフォンだと思います。
が、海外の販売サイトを見ると、10万円弱で買えそうな感じ。本当にお買い得です。
Sennheiser Momentum True Wireless
Sennheiserの完全ワイヤレスイヤフォン。Bluetooth接続でリモコン機能や、外部の音を拾えるなど、機能的にはかなり豊富です。
音色はそこそこ。低音寄りで、音の分離があまり良くありません。価格なりと言ってしまえばそれまでですが、オーディオ的にはそれほど魅力を感じず。
Crystalline audio
カナル型イヤフォンのチップです。以前はComplyの独壇場でしたが、ここ最近、色々なメーカーが参入してきたように思います。以前、比較記事を書きましたが、そろそろアップデートしないといけませんね。
KSE1500につけて試聴しました。低反発型のフォームで、Complyにかなり近いですが、より柔らかいです。中々形が元に戻らない感じ。ただ、Complyほどねちょねちょしたイメージはありません。
遮音性はかなり良いと思います。音色に関しては、やや低音が引っ込む印象がありますが、ほんの僅かです。この辺りは耳との相性が大きいとは思いますが。
Mサイズを1ペア貰ってきたので、比較は別の記事に纏めたいと思います。
Crystalline Audio クリスタルチップス イヤーピース Mコア Mサイズ 1ペア 高音質 高耐久 耐熱 耐汗 遮音性 ノイズ低減 フィット感向上 CTSPMM 【国内正規品】
- 出版社/メーカー: Crystalline Audio
- 発売日: 2017/11/30
- メディア: エレクトロニクス
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FOSTEX TH909
スピーカーユニットで有名なFOSTEXの新フラグシップ。TH900は密閉型でしたが、今度は開放型です。
まんま、TH900を開放型にしたような音がします。かなり抜けがよくなり、元気が良い感じになります。低音の質はかなり高いものがあり、分解能も非常に優れています。また、能率が良く、ポータブル用のアンプでも十分鳴らせます。
一方、高音はかなりシャリついていました。エイジングの関係もあるのかもしれませんが、正直この価格帯でこの高音はちょっと問題があるのではないかと思います。ちょっと、今度どこかで再挑戦してみたいくらいです。
FitEar EST Custom/Universal
カスタムイヤフォンで有名なFitEarの、静電型ドライバとBAドライブのハイブリット型イヤフォン。ツイータに静電型を使って、BAはフルレンジとのこと。
静電型を利用したハイブリットは史上初なのではないかと思います。しかも、静電型なのに外部電源を要しない、という脅威の構造。考えた人に敬服します。
肝心の音色ですが、静電型のおかげか、高音部はかなり細やかに伸びており、かなり魅力的な印象。一方、低音部は平板な印象で、レンジがやや狭く制動も甘い印象。
ただ、ハイブリットですが、特に切れ目があるわけでもなく、かなり自然な音造りです。全体的に欠点の少ない優秀なモデルだと思います。
個人的にはフルレンジにダイナミック型、ツイータに静電型を使ったモデルが聞いてみたいです。
JVC HA-FW10000
JVCケンウッドのイヤフォン。ダイナミック型です。イヤフォンにしては、かなり重いです。木製だからでしょうか。
JVCは以前から木の振動板を使ったスピーカーやイヤフォンを世に出していますが、その最新型です。
ダイナミック型らしく、大変魅力的な、躍動感溢れる音がします。帯域バランスはややかまぼこ形で、楽しくリスニングが出来る感じ。レンジも広く、分解能も十分なものがあります。
楽しくリスニング出来る、という点でかなり高レベルのイヤフォンだと思います。18万円程度になるとのことで、ユニバーサル型としてはかなりの値段になりますが、それだけの価値はあると思います。
Victor JVC HA-FW10000 WOODシリーズ カナル型イヤホン リケーブル/ハイレゾ音源対応 ブラック
- 出版社/メーカー: JVCケンウッド
- 発売日: 2018/11/08
- メディア: エレクトロニクス
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Dekoni Audio Bulletz Gemini
こちらもカナル型イヤフォンのイヤーチップ。同じく、KSE1500で試聴しました。同じく、低反発のフォームです。
手触りがよりさらさらした印象です。反発力はComplyとあまり変わらない印象。遮音性は抜群で、音質に与える影響はより少ないイメージです。
こちらもサンプルをくれたので、後で記事に纏めたいと思います。
DEKONI BULLETZ デコニ バレッツ Mercury 4.9MM(S/M/L) フォームイヤーチップ[イヤーチップ S,M,Lサイズ 3ペア]
- 出版社/メーカー: DEKONI AUDIO(デコニオーディオ)
- メディア: エレクトロニクス
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今回もかなり実りの多い、イベントになりました。特にJVCのHA-FW10000とQUADのERA-1はかなりの好印象でした。また、Edition11も捲土重来という感じで、Ultrasoneの底力を見たような気がしました。
また、各社ともワイヤレスイヤフォンに力を入れているようですが、音質的にはまだまだという印象。1つのイベントに2タイプの製品が混在していて、少し雑多な感じになってきました。
ともあれ、また半年後を楽しみにしております。
ヘッドフォン祭2018春に行ってきました!
半年ぶりのお祭り、ヘッドフォン祭2018春に行ってきました。開場は相変わらず中野サンプラザ。
数年前に比べて、人が減ったような気がします。ブースを見て回るのには都合が良いのですが、ちょっと先行きが心配な気がします。
今回は物販で何も購入せず。なんとか散財スパイラルから踏みとどまっています。
では、恒例の視聴レビュー。今回は、大手というかヘッドフォン界の老舗が次々フラグシップを発表し、実り多い視聴体験でした。フラグシップを中心に、印象の大きかった製品をご紹介します。
Sennheiser HD820
Sennheiserの新フラグシップHD820です。モデルナンバから、HD800/800Sの後継機という位置かと思ったら、密閉型とのこと。
Sernnheiserのフラグシップなので、当然基礎能力としては最高クラスの一品です。解像度、音の滑らかさ、バランス、それに装着感。すべてが高いレベルでまとまっていて、文句のつけようがありません。特に、音場については、密閉型とは思えないほどの広大さです。
ただ、HD800と比べると毛色の違う音の造りです。HD800はどちらかというと、モニタライクな音色でしたが、HD820はもっと叙情的というか、艶っぽい音の鳴り方をします。
夏頃発売で、30万円前後になるのではないかとのこと。うーん、どうでしょう。HD800が10万ちょっとで買える現状で、3倍の額となるとやや厳しいかもしれません。UtopiaやSR-009あたりとの勝負になるかと思いますが、そこまでの優位性は感じられません。オーディオテクニカやPioneer、Ultrasone等も含め、全体的にインフレが進んでますが、ユーザからの指示は得られるでしょうか。
AKG N5005
AKGの新フラグシップイヤホン、N5005です。フラグシップの更新はK3003以来ですね。リケーブル対応、Bluetooth対応と時代に合わせてきました。イヤーピースも含め、豊富な付属品がついてきているのも売りの一つでしょうか。
K3003がお気に入りなこともあって、もの凄く期待して聞きました。基礎性能はやはりかなり高いです。ハイブリッドらしい魅力的な音色ですし、バランスや音場も良好です。
ただ、K3003と聞き比べると、かなり厳しい印象です。N5005の方がややかまぼこバランスで、高低ともにレンジが狭く感じられます。(イヤーピースの違いもあるかもしれません)ボーカルを重視した音作りに感じますが、総合的にはやや劣る印象でした。
ブースの人に、K3003はリケーブルやBluetoothに対応しないのか聞いてみましたが、多分無いだろうとのこと。個人的には期待しているのですが………。
STAX SR-009S
STAXの新フラグシップ SR-009Sです。こちらはもちろん、SR-009からの更新となります。009ユーザとして、もちろん試聴してきました。
SR-009からの更新ですので、もちろん性能は世界最高峰。コンデンサらしい音がします。音色は最高に美しく、音場は明確で不自然さを感じさせず、帯域バランス、レンジの広さ、どれをとっても一級品です。
ただ、正直言って、マイナーチェンジ感は否めません。ほぼ同じ音がすると思います。一点だけ、違いを感じたのは、009Sの方が、ややスッキリした音になりました。少しモニタライクになったと思います。この辺りは好みとして出てくるかも知れません。
ただ、わざわざSR-009から買い替えるかというと………。T8000を買う方が優先順位としては高いです。
Mr. Speakers VOCE
魅力的なヘッドフォンを出し続けている、Mr.Speakersの新モデルです。たぶん、ガレージメーカなのでしょうか。全然知名度はなく、量販店ではまず売っていませんが、とても良い製品を作っているメーカです。
さて、今回はコンデンサ型の新作です。たしか、前回は試作機が出ていたかと思いましたが、昨日発売したとのこと。
大変素晴らしい音がします。コンデンサ型らしい、緻密な音がします。基礎性能はSR-009と同等レベル。価格も結構なものですが、それに見合う性能があると思います。
音色としては009ほどはモニタ寄りではなく、少し艶っぽい感じがします。SR-009Sとは逆方向の進化ですね。ボーカルものなんかを聞くときには、こちらの方が良いと思います。
一つ難点があるのは、ドライバの問題。STAXのドライバと互換性があるとのことですが……。試聴ブースで使っていたBlue Hawaiiも代理店が取り扱うとのことですが、VOCEとBlue hawaiiだと、100万円コースですね……。
ところで、コンデンサ型のドライバって、どうして真空管ばかりなのでしょう?
他に、FitEar 224DTWやShure KSE1200など、いくつか目玉出品も有り、大変実りの多いイベントでした。半年後が今から楽しみです。
ヘッドフォン祭2017秋に行ってきました!
毎回恒例、ヘッドフォン祭りに行ってきました。会場は変わらず中野サンプラザ。アクセスの悪さも毎度恒例です。
今回はきっちり財布の紐を締めたままで帰ってきました.正直、PS2000e balancedが残っていたのでとても迷ったのですが、なんとか我慢しました。
さて、恒例の視聴レビューです。
Audio Technica ATH-ADX5000
オーテクの新リファレンスモデル。開放型です。基本は標準プラグですが、オプションで4pin XLRも同時発売とのこと。
バランスはややかまぼこ形。低音は非常に洗練された締まった音で、とても上質です。高音は伸びきらないイメージですが、必要十分の量が出ています。
音場は立体的で、奥行きが感じられます。それでも、音域バランスのおかげでモニタライクな感じはせずに、魅力的に展開します。
音色的にはHD800に近い感じ。かなり源音に忠実だと思われます。
基礎レベル的にはかなり高いレベルにあります。同時に過度にモニタよりにならず、楽しく音楽が聴けるタイプの機種です。特にポップスなど、ボーカルものにははかなり向いていると思います。
お値段は25万ほどらしいですが、それだけの実力はあると思います。
Ultrasone Edition15
Editionシリーズの新作です。Edition8みたいな見た目ですが、今回は開放型。
正直、ちょっとびっくりしました。Editionシリーズらしからぬ音がします。
今までの印象からすると、Editionシリーズは分解能はじめ、基礎性能は他に追随を許さないほど高い一方で、過度にモニタライクというか、リスニングというものに対してあまり重きを置いていない印象がありました。
でも、今回のEdition15は楽しくリスニング出来る音作りな気がします。基礎性能がとても高いのはもちろんなのですが、バランスはややかまぼこ形。音場はUltrasoneらしい、縦への奥行きが感じられる機種です。
お値段はそれなりにしますが、これも魅力に溢れた機種だと思います。
FitEar Air2
FitEarのカスタム・ハイブリッドモデルの第2弾。
とても魅力的な音がします。とにかく、音色が綺麗でイヤフォンとは思えません。バランスも気になる部分がなく、上から下までフラットに出て、良く調整されている感じがします。
今まで聞いたイヤフォンの中でも最高峰に位置する機種です。K3003からの乗り換えを検討できる、数少ないイヤフォンでしょう。
価格もカスタムの割にはそこまで高くなく、恐らく、ベストバイの機種だと思います。
Mr Speakers Ether ES
静電型の試作機を聞いてみました。ドライバはBlue Hawaii。
静電型らしい、非常に細やかな音がします。バランスはほぼフラット。音場は特筆するほどのものはありませんが、基礎性能としては十分なもの。
全体的に見て、SR-009に比肩しうる機種だと思います。一方、ドライバを開発する気が無いそうです。STAXのドライバなら動くそうですが……。
Nmode X-HA3
Nmodeのバランス対応ヘッドフォンアンプ。X-HA1の後継機とのこと。音色的にはほぼ踏襲。
機能としては4pinのXLRが追加されました。バランス接続は4pinXLRに収束しそうな感じがします………。
価格は10万円ほどとのこと。少し割高な印象になりましたが、それでもしっかりとしたフラットな音を出してくれる機種だと思います。
さて、全体的にヘッドフォン業界のトレンドが、オーディオの原点に立ち返ってきている気がします。
以前は、基礎性能至上主義というか、分解能や音場などにこだわった「こんな音まで聞こえる!」という機種が多く出ていたような気がします。
それが、性能向上協奏は一段落して、「いかに楽しく音楽を聴けるか」という方向にシフトしてきているような印象があります。
今後の発展が楽しみです。
P-700uのレビュー(Luxman)
Luxmanのバランスヘッドフォンアンプ、P-700uのレビューです。
ピュアオーディオで有名なLuxmanのヘッドフォンアンプ、P-700uです。大手国内メーカーではじめて、バランス駆動に対応したことで話題になりました。今となっては珍しくない価格帯ですが、当時としてはかなり挑戦的な値付けでした。昨今のヘッドフォンブーム火付け役の一翼を担った製品と言って良いでしょう。
発売から数年が経過し、後継のP-750uも発表されていますが、現在でもバランス駆動対応のHPAとして、最高峰の実力を持っています。
サイズ的には通常のオーディオ機器と同程度。ヘッドフォンアンプとしてはかなり大きい方です。また、Luxmanらしく、非常に重いです。
P-700uの仕様
入力はバランス(3pin XLR)2系統と、アンバランス(RCA)1系統です。DACは内蔵しておらず、アナログ入力のみです。
出力は3pinXLRのバランスヘッドフォン出力1系統と、アンバランス(6.3mm)2系統。700uには4pinのXLR出力がない点には注意が必要です。また、アンバランスのRCAにはパススルー出力があります。
他に機能として、左右のバランス調整と、入力感度の調整が可能です。
P-700uの音質
さて、音質をチェックしてみました。
接続した機器はPC→DA-06(Luxman)→(バランスケーブル)→P-700u。
使用したヘッドフォンはHD800(バランス接続)とEdition9(アンバランス接続)です。
一聴して、レベルの高さが判ります。
真っ直ぐに伸びていくような、澄み渡った音色です。一般にラックストーンと言われる、華やかなニュアンスも持っていますが、全体的にバランスが良く癖がありません。
描写の細かさはかなりハイレベル。HD800にしろEdition9にしろ解像度はかなり高い機種ですが、その実力を存分に活かしているようなイメージです。
帯域バランス敵にはかなりフラット。レンジ的にも上から下まで良く出ます。不自然に強調されたところがなく、ストレス無く聞くことが出来ます。
ノイズ感もほぼなく、設計のレベルの高さを覗わせます。また、音場もかなり明確。横への広がりは非常に優秀です。一方、奥行きはそれなりレベル。
X-HA1との比較
以前使っていたNmodeのX-HA1との比較ですが、価格差が3倍ほどあることもあり、さすがに差が大きいです。
X-HA1も全体的にレベルが高い機種ですが、音の細やかさや音場感、レンジの広さ、ノイズの少なさなど、すべての分野において、レベルが2つくらい上回っている印象です。ただ、バランスに関してはほぼ互角でしょうか。
総評
全体的に見て、いまだに世界最高峰のヘッドフォンアンプの1つだと思います。Luxmanという老舗だけあって、基礎性能の高さが群を抜いている印象です。際だった特徴こそありませんが、ヘッドフォンを選ばない、非常に優秀な機種だと思います。
ヘッドフォン祭2017春に行ってきました!
半年に一度の祭典、ヘッドフォン祭2017春に行ってきました。会場は相変わらず中野サンプラザ。
運用がちょっと変わったのか、入場はスムーズになりました。今回は30分ほど前につきましたが、開場の直前には展示階まで入れました。素晴らしいと思います。
さて、毎回財布の紐を締めて行っているつもりなのですが、今回も散財してしまいました。LuxmanのP-700uをついに購入。3年くらい買うかどうか悩んでいた物です。後述しますが、後継機P-750uを聴いての判断です。
さて、前々から気になっているコンデンサ型ドライバの新製品がいくつか発表されましたので、それを中心にレビューです。
STAX SRM-T8000
ついに出ました。約10年ぶりに、STAXのドライバがモデルチェンジ。
真空管と半導体のハイブリッドとのことで、たしかにSRM-727Aと007taの間のようなイメージの音がします。機能的には727Aを踏襲し、ボリュームスルーも搭載。
前モデルの007taは、艶っぽい華やかな音色が特長でしたが、ややノイジーという弱点が有り、逆に727Aは非常に澄んだ音がする一方で、無味乾燥なイメージがありました。
T8000は両方の良いところ取りをしたようなイメージです。727Aに比べややかまぼこ型のバランスで、音色はとても魅力的。それでいて静謐さというか、細やかな部分までまざまざと描き出してくれます。
ただ、お値段が60万円弱。SR-009Aより高いとは……。前に話を聞いたときには、そんなには高くならないような感じだったのですが。ヘッドフォンよりアンプの方が高価というのは不思議な感じがします。
これはむしろ、イヤースピーカー側もそれに見合った新機種が出る、ということなのでしょうか?
iFI-Audio Pro iESL
iFiのコンデンサ型ヘッドフォン用、出力用ユニットです。ついにデモ機がお目見えしました。
本体はボリュームが無いので、基本パワーアンプとしての運用。つまり、前段にプリアンプ的な何かが必要です。同じiFiのPro iCanと繋げて使う想定なのでしょう。他に4pinXLRとスピーカーターミナルでの入力が可能とのこと。
残念ながらブースにSTAXのヘッドフォンが置いていなかったので、単純な比較は出来ませんが、割とパワフル系の音がする印象です。ややドンシャリ寄りでしょうか。ぜひ、一度SR-009Aとのセットで聴いてみたいところです。
お値段はProシリーズと同じくらいになりそう、とのこと。Pro iCanとのセットだと40万超となり、それなりのお値段ですが、T8000よりは安価。試聴貸し出しを予定しているそうなので、場合によっては申し込むかもしれません。
Blue Hawaii
たしか、MrSpeakersのブースにあったかと思うのですが、コンデンサ型ヘッドフォンの試作機のドライブに利用されておりました。こちらもヘッドフォンが違うので、あまり参考になりませんが、締まった音がします。ややレンジが狭い印象ですが、とても元気な音色が好印象でした。
その他、コンデンサ型ヘッドフォンドライバ以外の試聴です。
GRADO PS2000e
ついにPS1000の後継機が出ました。見た目はPSシリーズそのまま。すこしバンドが大きくなったそうで、装着感が良くなりました。GRADOと言えば、つけ心地の悪さで有名でしたが、かなり改善されています。
音色はPS1000の正統進化版。この暴れん坊っぷりは他では決して真似出来ない音でしょう。超パワフル。ノリと勢いにかけては他の追随を許しません。それでいて音楽を破綻させないバランス感覚。脱帽です。
2000になって、基礎能力的にかなり向上した印象があります。解像度に関してかなり高級ヘッドフォンっぽくなってきました。
お値段は30万円前後の予定とのこと。バランス版が出るかは未定。
ヘッドフォンを使い分ける人には、是非持っていて欲しい一台です。
LUXMAN P-750u
LUXMANの名器にして、バランス出力アンプの地位を確固とした歴史的名作、P-700uの後継機です。機能的には4pinのXLR出力を搭載したくらいが変化でしょうか。この感じだと、将来的にバランス出力は4pin XLRに集約されるのでしょうか……。
さて、音質ですが、ややロー上がりになった気がします。元々がかなりフラットなので、少し目立つ印象。基礎性能に関しては相変わらず、非常に高いです。
絶対的なレベルに関しては700からほぼ変化がないかと思います。新フラグシップというよりはマイナーチェンジの方が近いでしょう。値段的には少し高くなりますが……。
700uはディスコンになるとのことなので、入れ替わりのポジションとなると思います。部品の生産終了とかがあったのでしょうか……。とまれ、700から買い替えるほどの違いはないかと思います。
SONY Just ear
天下のSonyが出したカスタムイヤホン。ダイナミックとBAのハイブリッドのようです。音色も数種類からカスタム出来るとのこと。大手なのに攻めてますね。本業が好調だから色々挑戦できるのでしょうか……。
モニタ・リスニング・クラブの3つのタイプを聴かせて貰いました。後ろに行くほどバランスがロー上がりになります。モニタが一番好みでした。
うーん。低音はよく制動されていますし、中音域も綺麗です。ただ、高音の伸びは今ひとつでやや籠もっているような気がします。
カスタムの高級機がたくさん出ている中では少し厳しいような気がします。
SONY TA-ZH1ES
こちらは据え置き型DAC内蔵ヘッドフォンアンプ。とはいえ、ブースの人曰く、デジタルアンプなので、DA変換は最後の最後、と仰っておりました。
出力はバランス端子が3.5の4pin端子(標準化したと主張しておりましたが)を採用。3.5×2も可能とのことですが。あと、4pinXLRとアンバランス2種類。独自端子を採用しつつ、ディファクトスタンダードも採用、とちょっと中途半端な印象。あとプリアウトがあります。
入力は光と同軸、USB。アナログRCAも受けられるようです。
割とドンシャリな音がしました。楽しくリスニング出来る音作りです。上記のJust earもですが、Sonyは会社として、『楽しいリスニング』を目指している気がします。
オールインワンの、割と良い機種だとは思うのですが、値段に見合うかというと、少し厳しいような気がします。10万クラスのDACとヘッドフォンアンプをセットで買えば、それで良いような……。
RE LEAF E3 Hybrid
Current DriveとVoltage Driveの世界初のハイブリッド構成を謳ったヘッドフォンアンプです。
Re Leafといえば、いつもとんでもない値段のアンプを出しているメーカという印象だったのですが、今回は少し御休め。それでも60万くらいですが。
HD800がつないであったのですが、凄く良い音がしました。これだけの値段がするだけのことがあります。
まず基礎性能が非常に高い。音の細やかさ。音場の正確性。バランスのフラットさとほぼ満点の評価。それでいて、過度にモニタリングに特化しているわけでも無く、楽しく音楽を聴ける味付け。極上の機器です。以前に聴いたE1よりも(値段は安いはずですが)好きな音です。
Current Driveの説明をブースで伺ったのですが、ちんぷんかんぷんでした。アンプ回路の専門家では無いので……。
現存するアンプの中では、最高の一台では無いでしょうか。
Chord Blu mk2 + DAVE
ChordのCDトランスポートとヘッドフォン・プリアンプ内蔵DACです。セットで試聴。ヘッドフォンはTribute7でした。
Bluの方はCDトランスポート、なのでデジタル出力のみ。いまどきCDの再生って市場があるのか?と思ったのですが……。実はUSB入力がついており、アップサンプリング可能なDDコンバータとして使用可能とのこと。恐らく、こちらがメインなのでしょう。
なんと、最大 705.6kHzにまでアップサンプリング出来るとのこと。そんなのを受けられるのはDAVEしか無いと思いますが……。
凄いとは思うのですが、あまりにニッチな気がします。お値段120万円とのことですが、DDCにそこまで出せるのは、8桁以上のスピーカーを使っている人だけじゃないかと思うのですが……。
番外編
マス工房のブースに往年の名機にして史上最大の変態ヘッドフォン、AKGのK1000がありました。
ずっと興味があったのですが、初めて聴くことが出来ました。20年前の機種と思えないほど、素晴らしい音色。音場が「ヘッドフォンと思えない」レベルです。つーかヘッドフォンじゃ無いでしょう、これ。
ただ、音漏れがする、というか、頭にスピーカーをぶら下げているというか。装着感も最悪です。
まあ、音は非常に良い物ですし、歴史的にも価値のある物だと思いますので、一度はあたまに被ってみるのが良いと思います。
と、今回も実り多きお祭りでした。また散財してしまいましたが……。とまれ、P-700uが届くのと、半年後の開催を楽しみにしたいと思います。