Blooming Wooing Audio

オーディオや音楽についてのblogです。手持ち機器のレビューやイベント参加感想など。

SR-X9000のレビュー(STAX)

STAXのヘッドフォン(イヤースピーカー)、SR-X9000のレビューです。

 

STAXと言えば、言わずと知れた、静電型(コンデンサ型)ヘッドフォンの老舗であり、静電型と言えばSTAXSTAXと言えば静電型、と言っても過言でないほどに、この業界では知られた存在です。

 

長らく、そのSTAXのSR-009を愛用してきたのですが、ついにX9000に乗り換えましたのレビューします。

 

環境として、特に断りが無い限りは以下の構成です。比較対象はSR-009になります。

 

PC → Soulnote D-2 → Re・leaf E5 studio → iFi iESL → STAX SR-X9000

 

SR-X9000について

STAXの新フラグシップモデルです。2021年秋に発売されSR-009、009Sと続いてきたリファレンスモデルの正統進化版というところです。STAXの新製品としてやはり注目度が高いのか、1年以上経った今でも品薄の状態が続いています。実際、私も発注してから2ヶ月近く経ってようやく納品されました。

 

価格としては60万円以上。SennheiserのHE-1は別格としても、世界的に見て最も高価なヘッドフォンの一つです。

 

静電型ヘッドフォンと専用アンプについて

今さら説明するまでもないと思いますが、STAXのヘッドフォンは静電型という特殊なものになっています。静電型の強みとしては、他の種類のユニットに比べ振動膜を薄くすることが出来、音の再現性を高める上で有利なことだと言われています。

ただ、通常のダイナミック型やBA型とは異なり、STAXのヘッドフォンには専用のアンプが必要になります。最近は静電型のユニットを使っているのに通常の接続で聞くことができるイヤフォンが出てきていますが、元々静電型のスピーカーユニットは高電圧をかけるための専用のアンプが必要になります。

この特殊な接続の所為か、以前は静電型はSTAX以外ほとんど製品を見ませんでしたが、ここ10年ほどの間にHifimanやAudezeなど、いくつか意欲的な製品を出すメーカーもいくつか出てきました。ただ、それも殆どがSTAXと互換性があるような形で作られています。

アンプについてはSTAXから出ているもののほか、いくつかサードパーティ製のものも出ています。普通、X9000と繋ぐとなると、STAXSRM-T8000が真っ先に候補にあがると思います。が、私はiFiのiESL を利用しています。その前段にE5 Studioというかなり変化球な構成ですが、T8000に決して劣らない構成になっていると思います。

 

音質

肝心の音質ですが、どの要素を取っても最高峰のレベルです。基本的な性能として、レンジの広さや分解能などがあると思いますがどれも一級品。レンジは高い方はどこまでも伸びやかに響きますし、低音側もヘッドフォンとは思えないほど深く沈みこみます。また、SR-009のときはやや低音の量感が不足気味というか大人しかったのですが、X9000では存在感もかなり高く出ています。

音の再現性や細やかさという意味では、生音と聞き違えそうなほどの精確さを持っています。たとえば木管や弦楽器などなら、当に生楽器のように柔らかく訴えかけてきます。一方でディストーションを利かせたギターなども、波形を正確に再現しているためか、説得力を持って聴かせてきます。

音場についても前後、左右共に非常に分離が良く、演奏者の位置が正確にわかるほどです。

 

こう書くとなんだかモニタライクな音作りのようですが、X9000は決してそんなことはなく、非常に音楽的に洗練されている印象があります。個人的に特に強くSR-009との差を強く感じるのはこの部分です。

文章にするのが難しいですが、色んな楽器の聞き所、音楽の聴かせ処を知っているかのような音作りをしている感じがします。この曲の、一番の聴かせ処はここなんだ、というのをきちんと抑えて鳴らしているような、そんな感覚に陥ります。

 

また、音の柔らかさについても大きく進化しているように感じます。私は音質チェックのときに柴田淳さんの曲を聴くことが多いのです。X9000と009で聞き比べているときに、同じくらいの音量で聴いていて、009だと少しうるさい、と感じていることが気が付きました。009はもう7年以上も使っていて、そんな風に感じたことは初めてでした。(PS2000eとかEdition9ではよく思いますけど)

この辺の、一つ一つの音作り、音楽全体をみたときのバランスの良さ、といった細かな調整の部分もメーカーとして非常にこだわっているのではないかと感じます。

 

どんな音楽でも苦もなく鳴らすことができる機種ですが、得意なのは生楽器だと思います。先述の音作りの部分は他のヘッドフォンと比べ頭一つ抜けているものですので、やはりオーケストラや室内楽などのクラシックはかなり得意だと思います。また、歌ものに関してもボーカルとバックのバランスが良く、音楽全体として楽しめる機種だと思います。

ロックやメタルももちろん上手に鳴らせますが、ノリノリという感じにはならないので、そういうものを求めている場合にはGradoとか他に良い候補があるように思います。

 

総評

最高のヘッドフォンです。それ以外の言葉が見つかりません。009のときも似たようなことを言っていた気がしますが、それをさらに更新してきました。

X9000自体の価格と、さらに専用アンプが必要になることもあり、導入のハードルは無茶苦茶高いものがあると思いますが、本当に世界最高のヘッドフォンだと思います。ヘッドフォン愛好家の方には是非一度聴いてみて欲しいと思う一品です。