UM56のレビュー(Westone)
Westoneのカスタムイヤーチップ、UM56のレビューです。
Westoneと言えば、カスタムIEMで有名な老舗メーカです。昨今のイヤフォン熱の高まりと共に新規参入するメーカも増えてきましたが、実績という点で、Westoneを上回るところは無いでしょう。
そんなWestoneが出しているのがUM56です。これはイヤフォンでは無く、カスタムイヤーチップです。つまり、カナル型イヤフォンの耳に入れる部分だけを、耳に合わせてオーダメイドで作成する物です。
一般的なカスタムIEMに比べ、耳に入れる部分のみだけであるため、装着感や遮音性に関しては若干劣るかと思われます。一方、大抵のカナル型イヤフォンで使用できるため、ユニバーサル型のお気に入りがある場合には、非常に魅力的な選択肢になります。
作成まで
さて、そんなわけでお気に入りのK3003用にUM56を作成しました。お店に行って、耳型を取り、その場でオーダしました。耳型を取る際に、口を開け閉めすると、耳の中が動いてしまうらしく、何かを咥えたまま、五分ほど待ちます。なるべく口を開けて取った方がフィット感は良くなる、と説明を受けて、大きめの塊を咥えてとりました。
オーダメイドだけあって、納品まで1ヶ月ほどかかりましたが、仕方が無いところでしょう。その場でざっと装着感などをチェックしましたが、特に問題は感じませんでした。
装着感など
いままで使っていた、K3003+Spiral dot (L) 環境との比較です。
装着感は、やはり圧倒的に良いです。耳にしっかりフィットしていて痛くも無いし、激しく動いてもずれません。また遮音性も抜群に良く、音漏れもまったくありません。これだけでも買う価値があるくらいです。
逆に、外の音は殆ど聞こえなくなるため、安全には注意が必要そうです。また、装着にはややコツが要ります。
音質
肝心の音質です。全体として上品になるようなイメージでしょうか。
バランスとしては、Spiral dotに比べ、ロー上がりになります。ただブーミーに膨らむ感じは受けません。高音は全体的に量は少なくなりますが、抜けが悪くなることはないです。K3003の良い部分を伸ばしつつ、弱い部分も補ってくれる印象。
音の分離・波形の再現性はかなり向上します。元々、K3003は分離の良い機種ですが、さらに磨きがかかる印象です。
音場に関して定位も明確になりますが、左右の広がりはやや狭まります。逆に奥行きは少し広がった印象。鼓膜に近づくからでしょうか。
総評
まず、音質以外の装着感・遮音性だけでかなり快適になります。また、音質については、使う機種との相性も大きいとは思いますが、かなりのレベルアップが見込めます。
ただ、UM56はそれなりのお値段なので、元々が良いイヤフォンで無い限り、選択肢にはならないでしょう。イヤフォン自体をグレードアップした方が、大抵は効果は大きいと思います。
ユニバーサルのフラグシップモデルでお気に入りがあるなら、是非作るべきだと思います。
iPurifierのレビュー(iFi Audio)
iFiのUSBノイズフィルタ、iPurifierのレビューです。
以前、USBケーブルで音は変わるのか?と題して記事を書きました。その後、iUSB PowerとGeminiのレビューも掲載しましたが、今回はそれに続き、iFi製品のUSB関連機器のレビューです。
実は先月、シンガポールに出張に行く機会があり、その際に買ってきたものです。iFi製品はシンガポールの方がかなり安く、iPurifierについても、日本の最安値より5000円ほど安いです。しかも、免税措置も受けられるため、さらにお得です。
結論から言うと、それなりに効果はあります。
試聴環境は
PC → Gemini (+iUSB Power)→ iPurifier → DA-06 → X-HA1 → HD800(バランス化)
となります。
使用方法
ただのフィルタなので、USBケーブルと機器の間に挿すだけです。と、いうか、こんな機器があるなら、Geminiにデフォルトで備え付けてくれれば良いと思うのですが。ちょっとあざとい?
音質の変化
さて、具体的にどう変わるのかというと、音の明瞭性のアップです。細かい音が聞き取れるようになりますし、音場も明確になります。みずみずしさが増し、リアル感が出てきます。
ただし、効果の程はやはりアクセサリー並です。スピーカーやDACを変えたときほどの変化は出ません。あくまで、ちょっとブラッシュアップしてくれる、程度です。まあ、繋ぐ先がDA-06というしっかりした電源を持つ機器なので……。
ノイズ感の現象?
「ノイズフィルタ」という名称なので、ノイズ感が減少するかと思っていましたが、あまりそういう効果は出ません。(元々ノイズの少ない環境だと言うこともあると思いますが)フィルタでノイズ感が減少するのは恐らく、アナログ段の部分でしょう。バスパワーで駆動するDACなどに使用すればそういう効果も出るかも知れません。
総評
よく出来たアクセサリーです。ピントがしっかりと合うようなイメージでしょうか。波形の再現性が高まります。
PCオーディオを構築している人は、使ってみるべき機器だと思います。
ヘッドフォン祭2015春に行ってきました!
昨年に引き続き、ヘッドフォン祭に行ってきました。会場は相変わらず中野。毎回のように苦言を呈していますが、上層階はイベントを行うことをあまり想定していないため、エレベータの台数が限られ、入退場はかなり不便です。国際フォーラムとかでやってくれないでしょうか……。主催者的に中野でやりたい気持ちも解るのですが。
LUXMANのブースで、DA-06にテレビの音が出ないことも伝えてきました。対応することはないと思いますが……。
今回も印象に残った製品をレビューします。色々聴いたので、長くなってしまいますが。
Pioneer SE-Master1
今回最大の目玉展示でしょう。試聴の列もずっと並んでいました。DAC/HPAのU-05とバランス接続しての試聴でした。XLRのバランスケーブルが公式で売り出されているとのことで、SennheiserやSONYのひそみに倣った形になります。
高価格帯のオープン型としては、かなり元気な音色であるという印象を受けました。HD800やK812よりはPS1000eに近く、元気で艶がある音です。バランスはかなりフラット。音場は開放型としてはかなり狭めですが、PS1000eほどではありません。音の分離は良好。
他の10万クラスの開放型ヘッドフォンが、モニタ寄りになっていることを考えると、中々面白い音作りだと思います。元気な音が好きだけど、GRADOでは癖が強すぎる、という人にはお薦めでしょう。
OPPO PM-1 & HA-1
PM-1は密閉型ヘッドフォン、HA-1はDAC内蔵ヘッドフォンアンプ。4極のバランス出力も出来ます。
密閉型らしい音で、Edition9やTH900を彷彿とさせます。バランスはやや低音寄りで高音は大人しめ。音場はやはり狭め。音色はかなり魅力的です。
はっきり言って、FostexのTH900と真っ向からぶつかるように感じました。価格帯も音色もかなり近いです。高音の量くらいでしょうか、違いは。
HA-1は入力も多くて、なかなか優秀なように感じました。ただバランス出力が4極なのが個人的にはちょっと……。規格を早く統一して欲しいです。
ASUS Essence III
PCパーツやスマホで有名なASUSが出したDAC/HPAです。私の自作PCのマザーボードはいつも、ASUSなのですが、オーディオに進出してくるとは思ってませんでした。
入出力は一通り揃っていますが、ヘッドフォンのバランス出力は出来ません。アナログ出力はありますが。基本的にはDACだということなのでしょう。
担当者が高音の広がりを意識した、と言っていたとおり、ややハイ上がりのバランス。低音は控えめですがタイト。音場は広いが分離はそこまで良くない。音色もそれほどではありません。
決して悪い音ではありません。しかし、同価格帯にDA-06があることを考えると、HPAがついているとは言え、コストパフォーマンス的にはかなり苦しいように思います。低価格帯モデルのEssence1の方が、その点では検討に値します。
Audio Technica ATH-CKR10
さて、実は1年以上前に発売されていたこのイヤフォン、なぜか今まで試聴していなかったのですが、驚きました。
ダイナミック型のユニットを平行に、しかも反対向きに並べた独自構造とのことです。
イヤフォンとしてちょっと他に例を見ない音がします。特に低音が素晴らしく、ここまでボリュームとタイトさを両立したイヤフォンは聴いたことがありません。オーバヘッド型でも稀でしょう。Edition9に匹敵しうるものです。これだけで買う価値は十分にあるでしょう。
一方で、音の分離や音場は平凡です。価格なりではありますが、各メーカーのフラグシップと比べると分が悪いのは否めません。
個人的には、これにさらにBA型を加えたハイブリット型を聴いてみたいのですが、さすがに難しいでしょうか……。
カスタムIEM系メーカ、聞き比べ
さて、実は今までカスタムIEMにあまり興味が無かったのです。中のユニットが音質に対して支配的であると私は考えているからです。とはいえ、食わず嫌いも良くないな、と聞き込んでみることにしました。とはいえ、カスタムしたものを試聴は出来ませんので、ユニバーサルモデルが中心です。
さて、お気に入りのK3003の牙城を崩せるのか、楽しみです。
Unique melody MASON & MARVERICK
まず、MASONの方はBA型の12ドライバ。ここまで多いのは珍しいですね。
バランスはフラットで良好。音の分離も中々悪くないが、線が細く少し分析的。音場はカナル型としては十分なレベル。全体としてややモニタ色が強い印象があります。
MARVERICKはK3003と同じハイブリット型。低音にダイナミックドライバがひとつ
残りはBA型とのことです。
ダイナミック型が入っているだけあって、音色は綺麗。バランスはやや低音より。高音の抜けが少し良くない。中音域はとても綺麗に出ます。
JH Audio Roxanne
こちらもBA型12ドライバ。ユニバーサルモデルです。個人的に名前が好きです。
肝心の音質ですが、かなり低音寄りで、ベースが膨らみます。あまりタイトではない。中音域ははっきり聞こえてくるが、高音の抜けは今一つ。音の分離が良くない。感じとして、Shureのイヤフォンに近い気がします。
Fit Ear 萌音17
アニソン向けカスタムIEMのブラッシュアップ版とのことです。こちらはユニバーサルでは提供されない模様。ブースには凄い人数が並んでいて、本当はParterreが聴きたかったのですが、こちらに案内されました。
バランスはかまぼこ形。ボーカルを意識したとのことで、さすがに音色は綺麗です。音場が狭く、本当に、歌を楽しみたい、というコンセプトで作られたのが判ります。分離はあまり良くない。
と、いうことで色々聴いてみました。ここに書いていないものもありますが、K3003から乗り換えたいと思うほどの機種はありませんでした。ひとつ選ぶならUnique MelodyのMASONでしょうか。基礎性能は一番高いように思います。
そんなこんなで、長くなりましたが、満喫しました。
DA-06のレビュー(LUXMAN)
LUXMANといえば、言わずと知れた老舗のオーディオメーカです。特にアンプでは高い評価を得ていて、その艶のある音色はラックストーンと呼ばれています。
その老舗が、USB入力を備え、ハイレゾにいち早く対応したDAC、DA-200を発表し、PCオーディオに目を向けたのは、かなり意外なニュースでした。あまり、そういう胡乱な新しい分野に手を出すイメージではなかったからです。
DA-06はそのDA-200の後発として出されたハイエンドのDACです。PCMだけでなく、DSD音源にも対応した、本気でPCオーディオに目を向けた製品です。前から欲しかったのですが、ついに買ってしまいました。
ロゴ
写真下部がDA-06。上に乗っているのがsa1.0
スペック
入力はUSB1系統、COAX2系統、OPT2系統、バランス(AES/EBU)1系統ということで、DACとしては十分すぎるほど。前面のつまみで入力を切り替えます。
アナログ出力はアンバランス(RCA)とバランス(XLR)が1系統ずつ。同時に出すことが出来ます。
他にデジタルの出力がCOAX1系統、OPT1系統あります。使いませんけど……。
音質
早速、音を出して聴いてみました。環境はいつも通り、ヘッドフォンははX-HA1+HD800(バランス化)。スピーカーはsa1.0+NS-1 classicsです。
PCから音を出しました。USBケーブルはiFi AudioのGeminiです。電源はiUSB Powerから給電していますが、バスパワー駆動ではないので、ほとんど効果は無いでしょう。
一聴して、音の良さが判りますが、一般的に言われるラックストーンのような強烈な個性は感じません。ハイエンド機特有の、極めてハイレベルにバランスが取れた音色です。また、ノイズ感はありません。
音の分離が非常に高く、しかも線が細い音ではありません。艶やかさと精密さを高いレベルで両立させた、非常に上品でしかも鋭い音です。さすがは老舗のメーカとでも言うべきか、きちんと音作りをしていることが判ります。
バランスはかなりフラットですが、ゆるいかまぼこ形です。中音域の音色の綺麗さは特筆ものです。また、低音域は力感が感じられますが、決して下品に膨らまず、よく制動されているのが判ります。高音域は決してしゃりつかず、やや丸みを帯びている印象です。
音場は、極端に広いわけではないですが、かなり明確です。横幅もほどよく広く、奥行きが感じられます。
フィルタとソフトウェア
DA-06では前面のボタンでフィルタを3パターンから切り替えることが出来ます。1が普通の音色。2は少しモニタより。3が艶やかさを強調しているような感じです。個人的にHD800では3が一番好きですが、NS-1 classicsでは2の方が良いように感じました。
また、LUXMANのWebページから、専用の再生ソフトウェア、「Luxman Audio Player」がダウンロードできます。
経験上、再生ソフトで音質が変わると言うのは解っていましたが、ここまで激変するとは思っていませんでした。普段使いのFoobar2000と比べ、明らかに精密さが違います。
ただ、操作性はめっぽう悪いです。ライブラリ機能がないので、エクスプローラからD&Dして使うのが主です。まあ、ソフトメーカーではないので仕方が無いのですが……。もうちょっと頑張って欲しかった。或いは、Foobar2000からこちらのプレーヤーのエンジンを使って再生、とかが出来れば良いんですけど……。
Digital Link III(PS AUDIO)との比較
これまで使っていたDL IIIと比較してみます。まあ、価格差が二倍以上あるので、ちょっと勝負になりませんが……。
音の分離と音色の綺麗さでは比較になりません。特にDL IIIは線が細い音だと言うこともあって、力感の部分で大きく差が付きます。また、低音の量において、大きくバランスも異なります。
音場の横の広さはDL IIIの方が広いですが、明確さでは圧倒的にDA-06。
基礎能力の点で、大きく水が開いているのは否定できないところです。値段も発売時期も全然違うので仕方が無いところではあるのですが……。それだけDA-06が素晴らしい機種だということは確かです。
DDCの有無による違い(iLink)
DA-06はもちろんUSB入力だけではなく、光や同軸も受けることが出来ます。PCからの再生ですと、専用のDDCを使うとどう変わるのか気になるところです。元々使っていたiFi AudioのiLinkを使った場合と、PCM音源で比較してみました。
どちらにせよ、USBケーブルはiFi Gemini With iUSB Power。同軸デジタルケーブルはAVCTの4C-XEWを使用しました。
僅差ですが、DA-06に直に入れた方が良い音がします。音の分離の違いを少し感じます。音色やバランスでは差が判りませんでした。本当に小さな差ですが、USB入力にもかなり気を遣っているのが判ります。
ただ、これはDA-06にはLuxman Audio Player、iLinkではFoobar2000を使ったときの差だという点には注意が必要です。両方ともFoobar2000から出したときには、違いを感じませんでした(ただし、iLinkではDSDがネイティブで再生出来ませんが)
つまり、機器の差よりは、ソフトウェアの違いと言った方が正確かも知れません。
ちょっとした問題点
さて、ここまでかなり褒め称えてきましたが、DA-06 にも難点があります。
ひとつは、ロックするときにカチカチと音がすること。特に、PCから音を出している場合、1曲ごとに音が鳴るので、少し気になります。
もう一点、かなりニッチな悩みです。私はPCでテレビも見ているのですが、DA-06にUSBで音声出力出来ません。著作権保護に引っかかっているようです。まあ、まさかLUXMANの設計者も、25万のDACにUSBからテレビの音を入れるとは思っていなかったのでしょう……。仕方が無いので、再生ソフトを立ち上げる前に、他のデバイスに切り替え、同軸でDA-06に入れています。手間なのでなんとかなると良いのですが……。
総評
PCでオーディオをやっている人にとっては、ひとつの到達点となるDACではないかと思います。もちろん。DSDをはじめとするハイレゾ対応、機能の豊富さがまず目に付くところです。
しかし、このDA-06の最大の素晴らしさは、基礎性能の高さにあります。ソースがどんなに高密度であっても、やはりそれを生かせなければ意味がありません。その点において、DA-06は一切の手を抜いていません。新しいフォーマットに対応しつつ、今まで培ってきたノウハウを生かした基礎性能も損なわない。まさに新時代に相応しい最高のオーディオ機器だと言えるでしょう。
イヤーチップの比較
カナル型イヤフォンで使用される、イヤーチップを比較してみました。使ったイヤフォンはもちろん、AKG K3003。上流はiFi Audio iLinkからJVC Kenwood SU-AX7に入れました。
イヤーチップに関しては使用者の耳の大きさや形に大きく左右されるであろうことから、あくまで参考程度に読んで貰えればと思います。
【追記】
カスタムイヤーチップUM56のレビューと比較はこちらに記事があります。
K3003に使えるイヤーチップ
K3003のノズルの先端のフィルター部分の外径は6mm程度です。ただノズル部分はもう少し細いので、チップの内径が5mm程度あればなんとか入ると思います。
Complyについては、公式サイトでは500seriesとなっていますが、eイヤホンのサイトで調べると400seriesと出ます。問い合わせたところ、どちらでも使えるが400の方がフィットするとのことなので、こちらを選びました。
対象イヤーチップ
せっかくなので写真を撮ってみました。
左から、
AKG 純正イヤーチップ
Comply Tx-400,Tsx-400
Senhheiser IE-8付属チップ(ウレタン、シングル、ラメラ、ダブル)
Monster Super tips ジェルタイプ
茶楽音人 Spinfit
JVC Spiral Dot
の10種類です。
他にも対応製品はあるかも知れませんが、とりあえず手元に揃えたのはこれだけです。
私は耳の穴が大きいようなので、使用したのはすべてLサイズです。
結果
Spiral Dotを使うことにしました。純正の良さを損なうことなく、さらに低音が出てバランスが良いように感じられたためです。ただ、音色がタイトな印象なので、好みが分かれるかも知れません。
純正のイヤーチップはかなり優秀です。特に高音の抜けが印象的です。やや低音が弱いですが、バランス敵には十分フラットですし、華が感じられます。
フィット感や遮音性を重視するならComplyはさすがの一言です。頭一つ抜けている印象です。Tsx400の方が音は魅力的だと思います。やや高音の抜けが悪いのが欠点ですが。
好みの要素が大きいとは思いますが、選ぶなら純正、Spiral Dot、Tsx400の3つのうちのどれかでは無いかと思います。
項目別評価
高音………純正=Spiral Dot >Spinfit =IE8 シングルフランジ > その他
低音………Spiral Dot = Tsx400 >Tx400 >その他
フィット感、遮音性………Tsx400 = Tx400 >IE8 ウレタン >その他
躍動感………純正 > Spiral Dot >IE8 ダブルフランジ >その他
分離………Spiral Dot >純正 >Spinfit >その他
チップごとのレビューを載せておきたいと思います。(普段と口調が違うのはご容赦ください)
AKG 純正イヤーチップ AC-3003
K3003本体に付属しているイヤーチップ。高音の伸びが非常に良い。低音もちゃんと出る。バランスとしては少しだけハイ上がりだがかなりフラット。割と自由奔放というか、暴れ馬な印象を受ける。音色は非常に綺麗。ポテンシャルは最高だけど制動という点ではあまり意識していない印象。躍動感は最高。
フィット感、遮音性は今一つ。
Comply Tx400
前からある方のヤツ。低音のボリュームがある。中・高音はそれなり。超低音まで出る。ロー上がり。純正に比べると、高音の抜けが少し悪い。良くも悪くも落ち着いた印象になる。籠もってるとまでは言わないが。
フィット感、遮音性は最高クラス。
Comply Tsx400
新しく出来た方のヤツ。Tx400よりさらに低音のボリュームがあるが、意外とタイト。超低音まで出る。低音の質では最高かも。中音も綺麗に出るが、高音は控えめ。ロー上がり。音の分離が今一つで、定位が曖昧になる印象。
フィット感、遮音性はこちらも最高クラス。
IE-8付属 ウレタンフォーム
スポンジで出来たヤツ。かまぼこバランスだがかなりフラット。純正チップを大人しくした印象。制動は良いが躍動感はやや削がれる。定位が良い。分離も悪くはない。音色は大人しめ。
フィット感、遮音性は純正よりは良い。
IE-8付属 シングルフランジ
普通の形のヤツ。ドンシャリ。純正に低音をプラスして躍動感を減らした感じ。減らしたといっても、Complyやウレタンよりはよほどある。分離はあまり良くない。音色があまり綺麗に感じない。
フィット感、遮音性は純正並
IE-8付属 ラメラ
変な形のヤツ。極端なハイ上がり。低音がびっくりするくらい出ない。音の分離は良い。硬質な音がする。金管とか鉄琴とかがビシバシくる感じ。
フィット感は良くない。遮音性は純正並。
IE-8付属 ダブルフランジ
二段キノコ。ややロー上がりだがかなりフラット。ただ、超低音が出ているかというとそうでもない。高音の抜けは今一つ。分離が良くないが音色は綺麗。躍動感は純正ほどではないがある。
フィット感は純正より少し悪い。遮音性は純正並。
Monster SuperTips ジェルタイプ
ぷにぷにしたヤツ。どうもサイズ的に耳にあっていないこと前提。低音が出ない。ハイ上がり。分離は悪くない。美音系。
フィット感が最悪。遮音性も悪い。
茶楽音人 SpinFit イヤーチップ
お洒落なヤツ。ハイ上がり。低音が出ない。抜け、分離は良い。純正をさらに極端に振った感じ。その割に高音の抜けは純正に劣る。音色は綺麗。見た目が可愛い。
フィット感、遮音性は純正並。
JVC Spiral Dot
普通な外見。少しだけロー上がり。超低音まで出る。純正並みに高音が抜けて躍動感がある。音色が全帯域を通してタイト。分離がすごく良い。定位も優秀。
フィット感、遮音性は純正より良い。
以上です。
ご参考になればと思います。
SP-12P-PCUHDのレビュー(AVケーブルテクノロジーズ)
AVケーブルテクノロジーズのスピーカーケーブル、SP-12P-PCUHDのレビューです。こちらもハイレゾ対応を謳っています。線材も、名前が示す通りPCUHDです。
製品写真を見ると判りますが、スピーカーケーブルの内部に12本の線材が平衡に入っています。並列に伝送しているケーブル構造は時折目にしますが、12本となると聞いたことがありません。
試聴環境はいつもどおり、NS-1 classicsとsa1.0のコンビ、だったのですが……。
接続に一苦労……
さて、12本の線材、音を出す以前に中々のくせ者であることが判明します。スピーカーケーブルとは思えない直径。下手な電源ケーブルくらいの太さがあるうえに硬さもかなりのもの。Y端子がついているものの、スピーカー端子に取り付けるまでが一苦労。
重さもあるので、スーパーツイーターに使おうなどと考えてはいけません。間違いなく宙に浮きます、ツイーターが。まさか、そんなことを考える人がいるとは思えませんが……。
素晴らしすぎるケーブル?
苦労しながら取り付けて、ようやく音出しです。
AVCTらしく、帯域バランスの良い音です。最低音から最高音まで滑らかに伸びていて、悪目立ちするような強調感もなく、非常に高いレベルで自然な音です。
特に、ハイレゾ対応を謳っているだけあって、超高音の音色は筆舌に尽くしがたいものがあります。ハイハットやシンバルなどの、普通なら耳に刺さってくるような音域のものでも、ナチュラルに”音がそこにある”ような感じを受けます。ヴォーカルのサ行が痛い感じもありません。高音が出ているのに上品、というのは中々貴重です。
分解能・音の綺麗さは文句のつけようがありません。もちろん、NS-1 classicsの特性あってのものですが、それでも高いレベルであることは疑いようのない事実です。
と、いうことでかなり満足して聴いていたのですが、途中で気が付きました。超低音があまり出ていないような気がするのです。中音域・高音域が非常に高品質であるからこそ、気が付いたことです。
ヘッドフォンなどとも聞き比べ、少し考えた結果、どうもこれはスピーカーの限界である、という結論に達しました。使用しているNS-1 classicsはブックシェルフ型で、ユニットの直径が16cmしかありません。やはり、低音を鳴らすのはあまり得意でないモデルなのです。
友人のところに持ち込み
そこで、オーディオルームを持っている知り合いの所に持ち込みました。友人のシステムに接続して聴いてみたのです。
環境としてはMarantzのCDPとアンプ(SA11とPM11だと思います、世代は聞いていません)、スピーカーはFostexのユニット(モデルは聞いていません。直径50cmくらい)を使った自作でかなり大きいです。
本領発揮
音を出してみると、圧倒的な差でした。私のシステムでは出ていなかった超低音域までしっかり出ています。それも、バランスを保ったまま。生音かと思えるほどの圧倒的な音質。分解能、音の綺麗さ、定位の良さ。すべてがパーフェクトに近い音質でした。
つまり、本来の意味での役不足だったのです。私の環境の方が、ケーブルに見合っていなかった。ちょっと書斎や寝室で聴きたい、程度の環境では物足りません。しっかり専用のオーディオルームを備えているくらいの物が必要です。
総評
はっきり言って、危険なケーブルです。使う人を選びます。取り回しの悪さもありますが、それ以上に、他の機器が持っている癖を明らかにしすぎてしまうケーブルです。
スピーカーやアンプ、DACなどの傾向・弱点が赤裸々に明かされます。今までなんとか誤魔化されてきた箇所が、白日の下に晒されるわけで、さらなる散財スパイラルのきっかけになってしまいそうな危険性を秘めています。
実力的には折り紙付きですが、購入するなら、それなりの覚悟を持っていないとお薦めできません。
SP-6P-PCUHDのレビュー(AVケーブルテクノロジーズ)
AVケーブルテクノロジーズのスピーカーケーブル、SP-6P-PCUHDのレビューです。
”ハイレゾ対応”を謳ったスピーカーケーブルというのも珍しいのではないでしょうか?
環境はいつも通り、スピーカーはNS-1 Classics、アンプはsa1.0です。
新素材PCUHDの実力は?
SP-6P-PCUHDは、名前から判るとおり、素材にPCUHDを使用しています。同じ古河電工というメーカーが作っているので、PCOCCの正統な後継素材ですね。同じくPCOCCを引き継いだ物にPC-TripleCもありますが、余所のメーカーがそう宣言して良いのでしょうか……。
ハイレゾ対応?
さて、昨今のオーディオ業界といえばハイレゾ一色です。が、話題となるのは音源やプレイヤー、DACまでで、アナログ段にまで言及されることはまずありません。
が、ハイレゾといえば、24bit192kHzといったような、多くの情報量を有しているのがポイントです。しかし、bit数はともかく、高周波帯域まで対応している製品は、意外と少ないのです。
例えば、私が使っている物の周波数帯域を調べてみると、K3003は10Hz~30kHz、HD800は6~51kHz、NS-1 classicsは60Hz~30kHzとなっています。アナログ部分なので、もちろん音が出ていないわけではないのでしょうが……。
SP-6P-PCUHDの周波数帯域
SP-6P-PCUHDの公式ページを見てみると、周波数特性が載っていて、100kHzまできちんと抵抗値を調整して作られているのが判ります。
ま、とはいえ、高周波が出ていたとしても、肝心の音が悪かったら何の意味も無いわけで。やはり耳に届くのは、一般に可聴帯域と呼ばれている20kHzくらいまでなので、最も重視されるのはその辺りでしょう。
一方で、20kHzまでの音をきちんと出すには、ある程度の余裕を持った設計が必須なので、結局のところ高音質菜製品は対応周波数帯域が高いと考えて差し支えないでしょう。
SP-6P-PCUHDの音質
で、肝心の音質です。
AVCTの特長である、フラットなバランスは健在です。超低域から高音域までバランス良く出ます。レンジも極めて広く、特に高音は綺麗に伸びきった澄んだ音色です。音の抜けが良く、とても見晴らしが広く感じます。中音域はあまり強調されず、綺麗に音場が配置されている印象。低音も量はあまり多くないですが、きっちり制御されたタイトな音質です。全体を通して非常に洗練されています。非常に基礎性能が高いことが判ります。
対応を謳ったハイレゾ音源に切り替えてみました。
同じハイレゾでも音源によるところが大きいのですが、一つ一つの音色がよりリアルになったように感じます。また、空気感が増したように感じました。生音でないと違いが判りにくいですが……。ソースの情報量が多くなった音型をダイレクトに受けられている実感があります。
総評
ハイレゾ対応は伊達ではありません。超高域までレンジが広い恩恵は非常に大きいように感じます。まさに、今の時代に相応しい、最新の製品です。
しかし、その特長がおまけに感じられるほど、基礎的な性能が優秀なモデルです。レンジの広さ、バランスの良さ、音の再現性と、非の打ち所がありません。
ハイレゾ環境でスピーカーを使っているならマストバイな一本と言って良いでしょう。