Blooming Wooing Audio

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USBケーブルで音は変わるのか?

ケーブルで本当に音が変わるのか?

オーディオに拘る人にとって、ケーブルを替えることで音質をアップさせるというのはかなり市民権を得たアプローチです。しかし一方で、ケーブルで音が本当に変わるのか懐疑的な見方をする方が多いのも事実です。

そこで、今回はUSBケーブルで音が変わる技術的な仕組みを少し調べてみました。

結論だけ先に書くと、USBケーブルによって音質が変わることは有り得ます。それは技術的に根拠のあることです。

 

しかし、あくまで技術的なアプローチなので、「信号が電気的にどう変わるのか」のみを扱っています。

「人の耳で聞き分けられるほどの大きな違いなのか」については今回は触れていません。その判断をするためには別方向(例えば統計学や脳科学など)からのアプローチが必要となるでしょう。

 

USBケーブルの構造

簡単にUSBケーブルの構造を説明しますと、大きく二つの部分で出来ています。一つは信号としての電気を伝えるための導体(弱電線)。もう一つが動力としての電気を伝える導体です(強電線)。

当然、オーディオ信号は弱電線を流れています。バスパワーで駆動する機器の場合、強電線には機器を動作させるための電力がふんだんに流れています。ただし、外部電源を使用している機器の場合でも、強電線に一切電流が流れないわけではありません。

巷には強電線を排した弱電線のみのUSBケーブルも販売されていますが、一部動作しない機器もあるようです。

 

 

デジタル信号は変化しない?

USBケーブルを流れているのは、デジタル信号です。よく知られているように、デジタル信号は「0」と「1」だけで出来た信号です。アナログ信号に比べ劣化することが少なく、簡単に複製が出来、長期的な保存に向いています。実際に、たとえばUSB接続の外付けHDDにデータをコピーしても、オリジナルとデータが違ってしまうことはまずありません。そうじゃなかったら、記憶媒体として使い物にならないですからね……。保存したデータやプログラムが書き換わっていたら大問題です。

そう考えると、USBケーブルがどんなものであろうとも音質は変化しないように感じられます。何しろデータが変わるなどと言うことは、HDDを見る限りあり得ないようなのですから。

しかし実は同じUSB接続でも、オーディオ機器とHDDではその内部処理は大きく異なっているのです。

 

USBのデータ伝送方式

実はUSB接続では、データの転送にいくつか種類があります。

HDDで使われているのは「バルク転送」と呼ばれる方式です。これはデータの整合性を強く重視した方式です。転送時、データに誤りがあるような場合には、上流側にエラー訂正を要求することが出来、確実な転送を可能にしています。一方で、エラーが多い場合には頻繁にエラー訂正が起こることになり、速度については保証がありません。

 

オーディオ機器で採用されているのは「アイソクロナス転送」です。こちらは何より速度を優先しています。エラー訂正を行わない代わりに、一定の転送速度を保証します。

仮にエラーが多く、訂正処理が頻発するようだと、再生速度にデータ転送速度が間に合わなくなり、音楽が止まってしまう可能性があるので、このような方式が採られているようです。

 

つまり、USBオーディオ機器の場合、DACDDCが受け取ったデータが音源のソースと異なっていたとしても、そのまま再生されることとなります。

 

 

USBケーブルが影響を与える範囲

転送方式に「アイソクロナス転送」を採用している以上、USBケーブルで音が変わることは有り得ます。

特に、強電線と弱電線の距離が近いのが問題になりえます。強電線が発するノイズが悪影響を与えるので、弱電線を流れているオーディオ信号にエラーが発生する確率は、他のデジタル段に比べても、かなり高いように思われます。また、当然ながらケーブルだけでなく、USBボードなどでも影響が出ると考えられます。

一方で、外付けHDDに音楽データを保存していて、HDDとPCの接続にオーディオ用のUSBケーブルを使っている方を時折見かけます。しかしHDD接続時は「バルク転送」であり、エラー訂正が働くので、音質に影響はないと考えるのが自然です。

同様に、NASを接続しているLANケーブルを替えても影響は無いでしょう。挙げ句の果てにはオーディオ用SATAケーブルなんてのも見たことがありますが、言うまでもないでしょう。

デジタル段で、エラー訂正が働き、下流に十分なバッファがある環境ならば、ケーブルによって音が変わることは、よっぽどの劣悪な環境でもない限り考えにくいです。

 

 

結論

PCオーディオに興味がある方は、USBケーブルにも気を遣うべきだと思います。しかし、気にするのはオーディオ機器だけで良くHDDなどの記憶媒体との接続は通常のもので十分です。