Blooming Wooing Audio

オーディオや音楽についてのblogです。手持ち機器のレビューやイベント参加感想など。

シンガポールのオーディオ事情(非ヘッドフォン編)

2014年の頭までシンガポールに住んでいました。(イギリスに住んでいたこともありますが……)ちょっと海外のオーディオ事情について書いてみようと思います。ただ、ヘッドフォンはちょっと事情が異なるので、今回はスピーカーやアンプ、プレーヤーなどを中心に扱っている店です。

 

シンガポールのショッピング事情

そもそも、シンガポールではショッピングの事情が日本とは異なります、

向こうでは、お店はショッピングセンターに入っていることが多く、またセンターごとにお店の棲み分けが為されています。かなり曖昧なところもありますけどね。

たとえば、高級ブランドが多く入ったショッピングセンターや、もっと普及価格帯のお店が多いところ、あるいは家具屋ばかりだったり、楽器屋しかないセンターもあります。さらに、日系企業が多い、日本人御用達のショッピングセンターや、同様にフィリピン人御用達やマレー系御用達などの人種別に棲み分けがされているケースもあります。

そんな中に、オーディオ専門店が集まるショッピングセンターも当然存在します。

 

 

The Adelphi

そんなわけで、高級オーディオ店が集まるショッピングセンターといえば、The Adelphi(アデルフィ)という場所になります。はっきり言って、シンガポールピュアオーディオをやろうと思ったら、ここ以外に来る必要はありません。ここで全て揃いますし、ここに無かったら、シンガポール国内のどこにも無いと思った方が良いです。

 

The Adelphiはシンガポールの中心部に近い、MRT(地下鉄)のCity Hall駅から、歩いて3,4分といったところでしょうか。なぜか道に屋根があるので、雨が降っていても、横断歩道を渡るとき以外は濡れずに行けると思います。まあ、シンガポールはタクシーがすごく安いので、気軽に利用できますが。運転手に言えば、大体連れて行ってくれます。運が悪いと場所を知らないのですが、「Funanの隣」と言えば通じます。ちなみにFunanとはAdelphiの隣にある、電器屋が多く集まったショッピングモールです。

 

Adelphiの中の、大体2/3くらいはオーディオ屋です。他に美容院などがちらほらあります。下の方に、怪しげなマッサージ屋がいくつかあるのですが、利用したことはないので実態は判りません。

 

入ってみると判るのですが、オーディオ屋、ほとんど閉まっています。扉が閉ざされ、店内の照明も消えています。しかしドアに張り紙がしてあって、「用があったらここに電話してね!」と(もちろん英語で)書かれています。どうやら、同じショップが複数のブースを借りていて、全店舗に人員を配置出来ないみたいです。

 

取り扱っている物は日本のオーディオ屋とあまり変わりません。欧米のブランドが中心ですが、日本のYAMAHAやMarantzなどもかなり見かけます。ヨーロッパが多いでしょうか。Cambridge AudioやDynaudioをよく目にしました。

 

買い物は難しい?

ちなみに。こちらの店員さん、かなり商魂たくましく、試聴して買わないなどと言おうものなら、「どこが悪かった?」「どんな風にしたいんだ?」と質問攻め。適当にお茶を濁そうにも許してくれません。はっきり気に入らない点を伝えれば、納得してはくれるのですが……。

 

さらに。値札がついていないことが多いです。つまり、店員さんとの値段交渉が必須です。上手く駆け引きすれば、日本で買うよりかなり安くなりますが、下手をすると、相当にぼられるようです。(幸い、オーディオ店で失敗したことはありませんでしたが……)

商談の途中で、国籍を訊いてきたら注意した方が良いかもしれません。基本的に日本人はカモだという風潮が、シンガポールにはあります。

最低でも、日本での値段を事前にリサーチして、予算を決めてから挑むべきだと思います。

 

 

Sim Lim Square & Sim Lim Tower

さて、Adelphi以外でも店が無いわけではありません。ちょっとピュアから外れたことをやろうとする場合、別のショッピングセンターに行かないといけないのです。

それがSim Lim SquareとSim Lim Towerです。名前が似ていることからわかるように、かなり近く、交差点を挟んで反対側。

場所はちょっと不便です。一応最寄り駅はBugisとなりますが、少し歩きます。他にLittle IndiaやDhoby Ghaut辺りもあまり距離が変わりません。3つの駅のど真ん中にあるのですね。一応バス停は近くにありますが、シンガポールに慣れていないと上手く利用できないと思います。

一番確実なのはタクシーです。Sim Lim Squareを知らない運転手はシンガポールにはいません。確実に通じます。

 

さて、まずSquareの方ですが、こちらはパソコン関連のショップが集まっているショッピングセンターです。秋葉原の、末広町に近い辺り、とでも言いましょうか。(最近はかなりPCショップが減っているようですが) パソコンのパーツや本体、周辺機器、スマホなどを扱う店が多いです。

そのため、PCオーディオをやりたい人はこちらに来る必要があります。USBオーディオ機器やサウンドボードはこちらの方が品揃えが良いからです。他に、3軒ほどオーディオ屋もありますが、こちらはAdelphiに行った方が良いかも。

 

また、Towerの方ですが、こちらは自作派向けです。銅線や熱収縮チューブ、あるいはスピーカーユニットなどが売っているのはこちらです。同じ秋葉原でもラジオデパートの様な佇まいです。工具などもこちらでお求めを。

 

このSim Limの二つのショッピングセンターでは基本的に値札がついているので、レジに持っていくだけで済みます。ちょっと安心。

 

 

気になるお値段は

日本に比べても、まちまちです。安かったり高かったり。為替の変動の影響が大きいので、時期によってかなり違うと思います。これを書いている時点では円安なので、安くは感じないかと思います。

 

まず、日本と違って「国内メーカー」が基本的にはありません。Creativeはシンガポールのメーカーですが、別に安いわけでもありません。

 

日本メーカーですが、国内よりやや高め。Audio technicaやMarantzなどはちょっと乗ってるくらいですが、SONYなんかは結構上乗せされています。まあ、輸出入の費用がかかっているので当然ですが。

 

次に欧米メーカーですが、これがまちまちです。はっきり言って、輸入代理店のマージン率に依存します。

Cambridge Audioなどはかなりお安いです。(日本の代理店がマージンを多く取っているだけですが)DynaudioやB&Wも少し安かったように感じます。Harmanは逆に少し高めに感じました。

 

まとめ

とりあえず、The Adelphiに行くだけで済みます。ここで無かったら諦めるしかありません。(ネット通販などもありますけど)品揃えは決して悪くないので、よほど変なこだわりが無い限り、問題はないでしょう。後は店員との交渉次第で、かなりお求めやすくなりますよ。

 

K812の試聴レビュー (AKG)

AKGのフラグシップヘッドフォン、K812の試聴レビューです。

 

今までのレビューとは異なり、K812を所有していません。イベントや店頭で試聴したときの感想です。そのため、やや聞き込みが足りない可能性があります。

 

私が最初にK812を試聴したのは、2013年の12月にシンガポールで行われたMook Headphone Festival(多分、第2回だと思います)でのことです。今回のレビューはその時の感想が基になっています。

輸入代理店のブースにひっそりと置かれていたのですが、まったく宣伝されておらず、誰からも注目されていませんでした。とてももったいなことだと思いました。

ブースには他のAKGのヘッドフォンが一通り置いてあったほか、会場には多くの優秀な機種があったため、比較対象には事欠きませんでした。

 

その後、日本で数回聴く機会がありましたが、あまり印象は変わりませんでした。

 

AKGのフラグシップに恥じない音

音の印象ですが、やはり「AKGの音」と表現するのがぴったりです。それまでのフラグシップであったK701(マイナチェンジ版もありますが)の音の正統進化版だと考えて、まったく問題がないと思います。

とにかく、自然で滑らかです。帯域バランスはこれまで経験が無いほどにフラット。上から下まで極めてバランス良く鳴らしてくれます。また、上も下も非常に帯域が広く、ヘッドフォンでここまで広帯域なものは中々ありません。

また、AKGの最大のストロングポイントである音場の広さはやはり健在。それどころか、フラグシップだけあって、さらに広大になった印象です。

分解能、音の再現性もかなり高い実力を誇っています。基礎性能的には、ヘッドフォンの最高峰の一つに入るでしょう。

音の線はやや細め。少しモニタライクに聞こえるかも知れません。そのため、メタルやロックなどには向かないかもしれません。引き替えに、かなりの美音であるため、クラシックなどには最適でしょう。

 

K701との比較

会場にK701もあったため、比較しました。普段使ってますしね。

価格帯がかなり違うため、当然といえば当然なのですが、基礎性能の差が段違いです。特に帯域の広さ、分解能などの部分に関してはかなり大きな差が出ます。

また、バランスでは、K701はあまり低音が出ないのですが、K812の方はきちんと慣らしきります。それでいて中高音が埋もれないのが凄いところなのですが……。

音質面以外では、K812になって、能率がかなり良くなりました。ポータブル機でもなんとか鳴らせるくらいにまで高くなったように思います。その分、ノイズに弱くなったとも言えますが……。

 

 

HD800との比較

恐らく、価格や音質から考えて直接的に競合するのはこちらでしょう。SennheiserのHD800と比較してみました。

基礎性能は正直、甲乙付けがたいです。音場の広さ、分解能、源音忠実性。すべて伯仲しています。

音場についてはHD800の方がゆったりと広がっている感じ。K812の方がやや位置が明確に感じられました。分解能はややHD800の方が高い。原音忠実性はK812に軍配が上がる気がします。しかし、いずれもとても僅かな差です。両機種とも、とても高いレベルで張り合っています。

 

 

しかし、もし私が選ぶならK812です。なぜなら、K812の方が音のバランスが自然に感じられるからです。HD800は高音部に、強調された部分があるように感じられます。ポップスなどだと、そこが煌びやかに表現されて、それはそれで魅力的なのですが、時折鼻につくことがあります。K812にはそのような不自然さが感じられる部分がまったくないのです。

 

 

私の中でそういう位置づけなのですが、持っているのはHD800です。タイミングの問題だとしか言い様がありません。K812を初めて聴く、ほんの2週間前にHD800を買ったばかりであったため、そこでK812の購入に踏み切れなかったのです。そのうち、手に入れようとは思っていますが、いつになることやら。

 

総評

非常に高い位置でバランスの取れた、とても優秀なヘッドフォンです。総合的に見た場合、K812を上回るヘッドフォンは見当たりません。SR009くらいでしょうか。価格もそこまで極端な値付けでも無いです。

なぜこれが国内でベストセラーにならないのか不思議なくらいです。広告の差なのでしょうか?

 

AKG Superior Reference Headphones K812 【国内正規品】

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Edition9のレビュー(ULTLASONE)

Ultrasoneの密閉型ヘッドフォン、Edition9のレビューです。

 

Edition9は2006年に限定500台で発売になった当時のフラグシップヘッドフォンです。当時としては異例極まりない定価20万円超えだったのにも関わらず、最終的には1000台以上生産されたとのことで、人気の程が窺えます。

シリアルナンバが記載されていますが、私の物は100番をちょっと超えた辺りです。個人的に好きな数字なので、微妙にお気に入りです。

すでに生産終了しているので、新品を手に入れるのはもはや不可能です。中古も滅多に出ないようで、ときには定価よりも高く取引されていることすらあるようです。その実力もあって、かなり貴重な逸品です。

 

Edition9の音質

良い意味で他に類を見ない音です。基礎性能は非常に高く、分解能、解像度、帯域の広さともにヘッドフォンとして最高峰に位置しています。

密閉型だけあって、音場はやや狭めです。そのためフルオケのクラシックなどには向きませんが、打ち込み系やロック、パンク、メタルなどには最適でしょう。とても濃い音が楽しめます。

バランスとしてはややドンシャリ系。音が硬く、高音は少し刺激的です。大人しく楽しめるタイプではありませんが、バンドサウンドなどではそのノリの良さを楽しめます。

 

 

さて、Edition9の最大の特長は音の太さと分解能の両立です。高解像度を誇るヘッドフォンの場合、モニタライクとでもいうべきか、音の線が細いヘッドフォンが多いです。分解能は高いものの、音の迫力や勢いという点において、やや弱いのは仕方が無いことです。逆に勢いが感じられるヘッドフォンの場合、ある程度分解能を犠牲にしている面があるように感じられます。

しかし、Edition9はおそらく、世界で唯一、音の太さと分解能を両立させたヘッドフォンです。聴いていてノリノリで楽しめる迫力を持ちながら、聞き込めばどこまでも応えてくれる高い分解能を保持しています。これは発売から数年が経過した今となっても、ほかのどんなヘッドフォンも為し得ていないことです。

 

結果として、Edition9は世界最高の低音を鳴らすことの出来るヘッドフォンです。超低音まで沈みきる帯域の広さ。迫力を持ちながら、繊細な部分まで描き出す音の再現性。ここまで綺麗で、しかも楽しめるベースラインを出せるヘッドフォンは他にありません。まさに、世界最高の低音。これ以上の物は現状ありません。

 

Edition9の特性

密閉型でインピーダンスが低く能率が良いため、その気になれば外で使うことも可能です。

また、他の高級ヘッドフォンに比べ、環境をあまり選ばないことも特長の一つです。アンプやプレーヤーの影響が比較的少ない機種です。どんな環境でも、「Edition9の音」になるといって過言では無いほどの、個性的なヘッドフォンです。

 

 

HD800との比較

リファレンスとして使用しているSennheiserのHD800と比較してみました。

解像度はほぼ互角かややHD800が優勢です。音場もHD800の方が広く、帯域バランスもフラットです。再現性もHD800の方が高いでしょう。

などと書くと、圧倒的にHD800の方が優れているように感じられます。たしかに、総合的な基礎性能で現状、HD800は最高峰です。Edition9も十分すぎるほどに優秀ですが、基礎性能においてはさすがに分が悪い。

 

しかし、Edition9は唯一無二の特長を持っています。最高のヘッドフォンではないかもしれません。しかし最強のヘッドフォンなのです。

オールマイティに使うのならばHD800を選ぶべきでしょう。しかし、この低音。そして迫力と繊細さの同居。この二点だけで、HD800をも上回れるほどの魅力を備えています。

 

総評

最高の低音を奏でる、世界最強のヘッドフォンです。もし、一台だけヘッドフォンを買うならEdition9はお薦めしません。得手不得手がはっきりしていますし、性能的にもっと良い機種は存在します。

しかし、その特長と魅力を理解すれば、これ以上のヘッドフォンはありません。二台目、三台目として、存分に力を発揮してくれる異端な天才です。

 

 

ULTRASONE ヘッドフォン edition9 密閉ダイナミック型

ULTRASONE ヘッドフォン edition9 密閉ダイナミック型

 

 

 

 

PS-35のレビュー(AVケーブルテクノロジーズ)

AVケーブルテクノロジーズ電源ケーブルPS-35のレビューです。

 

PS-35は切り売りの電源コードです。プラグはついていないので、別途用意する必要があります。

 

私はPS-35を3本持っています。一本目は壁コンセント SWO-XXX と電源タップ e-TP60 の間、二本目はプリメインアンプ sa1.0、最後の一本はヘッドフォンアンプである Black cube linearに使用しています。

 

PS-35の音質

付属の電源ケーブルからPS-35につなぎ替えると、あまりの変化にびっくりします。かなり優秀なケーブルであると同時に、リーズナブルな点も見逃せません。体感ですが、10万円クラスのケーブルと比べても引けを取らない名器です。

音のバランスとしてはかなりフラット。よく聞き込むと少しかまぼこ形かもしれません。とても音楽的な響きを有しています。

低音はかなり深いところまで沈むように感じます。量は若干控えめなので、ベース命! な人には向かないかと思います。逆にジャズやクラシックなどウッドベースが好きな人には代えが利かない一品だと思います。もちろん、エレキベースでもその魅力は存分に発揮されます。

高音はやや控えめ。あまり強調されないため、キラキラした爽快感はありません。その分、不自然さはなく、素直に伸びていく印象です。

特筆すべきは中音域の音の綺麗さです。ボーカルや弦楽器、木管楽器などがとても心地よく聞こえます。美音を目指しているのなら、まずはこのケーブルを試すべきだと断言できます。

また、分解能、音の再現性に関しては白眉です。他の追随を許さぬ出来です。

 

 

PS Audio Prelude との比較

他に持っている電源ケーブルがこれしかないので必然的にPS Audio Preludeとの比較となります。

 

まず、バランスが大きく異なります。Preludeは明らかに低音が強調されています。一番低いところ、というよりはベース付近の周波数なのでしょうか。BoseやBeatsのヘッドフォンのよう、と言うと解りやすい人もいるかも知れません。

一方、PS-35はかなりフラットです。癖がないと言うか、特長がないというか。かなり上質で、慎重に設計されているのが聞いただけで判ります。

 

一番大きな違いは帯域の広さです。Preludeに比べ、PS-35の方が、圧倒的に広帯域です。低音も高音も明らかに広く、伸びきっているのが判ります。高音域がきちんと出るので、解像度や音の再現性も圧倒的に差があります。

帯域が狭い分、Preludeには力感があります。ガツっとパワフルに聞かせたいときはこちらの方が向いているでしょう。しかし、基礎的な実力があまりに違うため、聞き比べるとどうしてもPS-35の方が優れています。

 

総評

純粋に電源ケーブルとして非常に素晴らしい製品です。広帯域・高解像度を実現していて、しかも価格もあまり高くありません。切り売りなのでプラグを自由に選択できるのも楽しみの一つです。

特にアコースティック系の音楽を聴く場合には、一本持っていて損は無い製品です。そう力強くお薦めできます。

 

iUSB Powerのレビュー(iFi Audio)

iFi Audioのアクセサリ、iUSB Powerのレビューです。

 

以前、USBケーブルで音は変わるのか?という記事にも書きましたが、USBオーディオは伝送時に音が変わる可能性があります。

そのUSBオーディオ用アクセサリがiUSB Powerです。少々、独特な機能を持っている、面白い製品です。

 

USB 機器とバスパワー

USBオーディオ機器には、USBケーブルから給電された電力で動作する、バスパワー駆動の製品が多いです。私が持っているiFiのiLinkやM2TechのHi-faceもバスパワーで動作します。

 

しかし、USBケーブルの電流はPCから給電されたものです。そのため、PC内部で発生したノイズを多く含んでいることになります。このことは、音質面において、大きく不利になります。

本来なら、きちんとノイズ対策などを施した電源環境を用意したいのですが、通常、この手のUSB機器には電源入力の端子がついていません。

 

iUSB Powerの仕組み

iUSB Powerはそういった電源周りの問題点を解決するアクセサリです。

本体にはUSBの入力端子が1つ。出力端子が2つ、それと電源アダプタの入力端子がついています。アダプターは付属していますが、あまり良い物ではないように感じます。電圧と端子が合っている良い物があれば、交換してしまうのも手です。私は別のオーディオ機材に使っていた物が余っていたので、そちらに換えています。

 

さて、このUSB入力ですが、こちらはPCから入力します。その際、当然オーディオデータの信号とバスパワー用電力の両方を受け取ります。

これをこのまま機器に流したのでは、PCからのノイズに塗れた電力が渡ってしまいます。そこで、iUSB Powerの内部で、電力のみを切り離し、信号のみを取り出します。そして、電力はアダプターから給電された電力に載せ替えるのです。

 

つまり、オーディオ信号はPCから。電力はアダプターからのものを組み合わせた上で、機器側に回すことが出来ます。

 

出力端子が2つありますが、片方は電力のみを送ります。これは恐らく同じiFiのGeminiと組み合わせて使うことを想定しての物でしょう。

 

iUSB Powerの接続

自宅で実際に繋いで使っています。が、やや特殊な繋ぎ方になっています。

図にすると

          |        Gemini     |

          PC→→(信号)→→→↓

                    →→→→iLink→→DAC

電源→→iUSB Power→→(電力)→→→→↑

 

といった状態です。(見づらくてすいませnん)

 

つまり、二股に分かれたGeminiの片側(信号用)をPCに、もう片方(電力用)をiUSB Powerの電力用出力端子に繋いでいるのです。

理屈の上では、この接続がもっとも音質的に有利なはずです。iLinkにはiUSB Powerから取ったノイズの少ない電力と、Geminiによって完璧に電力線から切り離された信号が届くことになるからです。

 

iUSB Powerの音質

普通に繋いだときと、iUSB Powerを利用したときの音質を聞き比べて見ました。

高音域にかなり差が出るように感じます。また、音場がかなり明確になります。波形の再現性が高まっているのでしょう。これは他のアンプやDACなどの電源環境に手を入れたときに感じる違いと、かなり近いように感じます。

また、IsoEarthというさらにノイズを低減させるスイッチがついています。が、どうやら私のように入力端子に繋いでいない場合、効果は無いようです。一応つなぎ替えて試してみましたが、あまり大きな違いは感じられませんでした。

ただ、今回は繋いだ先がデジタル段であるDDCのiLinkなので、そこまで大きな違いは出ないように感じます。恐らく、繋いだ先がUSB DACのような、アナログ段を備えた機器ならば違いはもっと大きくなると思われます。

 

総評

なかなか面白い試みのアクセサリです。以前にも書きましたが、USB伝送は仕様上、不利な面が多く、改善策の効果が出やすい部分です。

PCオーディオに挑戦している場合、持っていて損はない製品だと思います。

 

が、この製品、買って1年の間に2度も故障しました。2回とも無償で新品に交換してもらえたので良かったのですが、やや不安の残るところです。

 

iFIオーディオ DAコンバーター アイUSBパワー IUSBPOWER
 

 

HD800のバランス化 (Sennheiser)

Sennheiserのヘッドフォン、HD800をバランス化しました。

 

HD800はケーブルが着脱式なので、容易にバランス化が可能です。そのため、Moon audioやサエクなどの交換用ケーブルが多く出ています。また、昨年にはSennheiser自身からもアンプと合わせて交換用ケーブルが出ました。(ただしこちらはアンプ側のコネクタが違うため、私の環境では使えません。)

 

もちろん、こうしたサードパーティ製の物を購入しても良かったのですが、今回は自作に挑戦してみることにしました。

 

ケーブル自作に必要な物

まず自作に必要な材料を準備します。まず、高品質なケーブルが必要ですが、ヘッドフォンに使う以上、ある程度細くて取り回しが良い物を選ぶ必要があります。そこでAVケーブルテクノロジーズのUT-1Q-MKⅡを使用することにしました。音質が素晴らしいことに加え、細さも取り回しも申し分ありません。また、中に4本の導体が入っているので、バランス化には過不足無くぴったりです。

次にコネクタです。アンプ側はXLRコネクタ(オス)が2つ。物置を漁っていたらヒロセ電機製のものが出てきたのでこれを使うことにしました。

問題になるのが、ヘッドフォン側のコネクタです。Sennheiserの独自規格であるうえに、HD650などとは互換性がありません。また、公式に販売もしていません。なのでALOのサイトから個人輸入しました。大体$50くらいですが、他に送料もかかります。

その他に半田付けが必要になります。オーディオ用の銀が配合されたものを選びました。融点が高く作業はやりにくいですが……。他に熱収縮チューブや絶縁テープがあると良いでしょう。

 

 

自作作業

ケーブルの両端にコネクタを半田付けするだけです。……するだけなのですが、とんでもない難物でした。

今までに何度か作業したことがあるのでXLRのコネクタは問題ありません。

しかし、ヘッドフォン側のコネクタは、とにかく小さい。線材の直径が0.4mm以下でないと、もの凄い苦労を強いられます。また、コネクタの距離が近いので、何かで絶縁しておかないとすぐにショートしてしまいそうで怖いです。結局、作業が全部終わるまで3時間以上かかりました。

 

 

音質

さっそく、オリジナルのケーブルと聞き比べて見ました。K701をバランス化したときにも思いましたが、バランス化によって、大きく特性が変わることはありません。やはり音質を決定する要因として、スピーカーユニットの比重が圧倒的に大きいのでしょう。ケーブルを替え、駆動方式を変えても、やはりHD800の音です。

しかし、実力の底上げという点では非常に大きな効果がありました。これはケーブルの特長も大きく出ていると思うのですが、かなりハイレンジになりました。ヘッドフォンにしては考えられないほどに超低音まで沈み込むようになりました。中~高音域はそれほど目立つ変化はありません。

また、ノイズ感が大きく減少しました。バランス伝送はアンバランスに比べ、対ノイズ性が強いので、当然の変化と言えます。

最大の変化は音の定位です。アースが分離したおかげでしょうか、左右の音の分離がはっきりとよくなりました。音がどこで鳴っているのか、かなり明確です。特に、バイノーラル録音のソースを聴くと、はっきり違いが判ります。

 

 

総評

自作作業はとにかく大変でした。知り合いに作業が上手な人がいたら、おまかせした方が良いかも知れません。

しかしその苦労に見合うだけの変化がありました。HD800はオリジナルでも屈指の実力を持ったヘッドフォンですが、バランス化によってさらに頭一つ抜け出たような印象があります。

せっかくこんな素晴らしいヘッドフォンなので、可能ならば是非バランス化に挑戦するべきだと思います。

 

 

ST-1Qのレビュー(AVケーブルテクノロジーズ)

AVケーブルテクノロジーズのアナログバランスケーブル、ST-1Qのレビューです。

 

バランスとアンバランス

オーディオ信号を伝えるインターコネクトケーブルにはバランスケーブルとアンバランスケーブルの2種類があります。通常の機器で使われているのはRCAコネクタのアンバランスです。アンバランスの方がバランスに比べ機器内の配線がシンプルで済みコストが抑えられる、というメリットがあります。しかし、伝送時に音質に与える影響を考えると、バランスの方がはるかに有利です。

そのため、機器が対応しているのならばバランスケーブルで接続した方が音質的には向上するでしょう。

 

バランスケーブルの構造とメリット

バランスケーブルの特長は、ケーブル内部にあるHotとColdの2本の線が電気的に同じ位置にあることです。その2本の線を撚り合わせることでバランスケーブルは出来ています。

そのため、ノイズに強いというのがメリットとしてあげられます。行きと帰りの線にかかる電圧が等しいため、磁界が打ち消し合うためです。

 

ST-1Qの音質

PS AudioのDLIIIとヘッドフォンアンプ(BCL Pro or X-HA1)の接続に使用しています。

少し聴いただけで、バランスの良さが際立っていることに気が付きます。低音から高音まで不自然に強調されていたり音量が小さいところがありません。よほど綿密に設計したのでしょう。非常にフラットで、むしろ特長の無さが気になるくらいのレベルです。

また、解像度の高さも特筆物です。解像度や音色の決定は超高周波をどれだけ正確に伝送できるかにかかっているのですが、そこまで計算に入れて作られているのでしょう。一つ一つの細かい音までしっかりと描き出してくれます。

非常に高いレベルで作られたケーブルです。価格を考えると、奇蹟としか思えないほどの高音質です。

 

総評

まず、バランス伝送することのメリットが非常に大きいです。その上で、ST-1Qはとても優秀なケーブルです。十万円クラスのケーブルと十分に太刀打ち出来るほどの実力を秘めています。特にバランスの良さ、音色の再現性は白眉です。