SR-009 + SRM-727Aのレビュー(STAX)
STAXのフラグシップイヤースピーカ、SR-009と専用ドライバSRM-727Aのレビューです。
STAXはコンデンサ型のヘッドフォンで有名な日本のメーカーです。(今は中国資本になったとのことですが)STAXはコンデンサ型ヘッドフォンのことを、イヤースピーカーと称しています。一般の、ダイナミック型とは違うぞ、との矜持でしょうか。
先日の記事に書いたとおり、秋のヘッドフォン祭でメーカ調整品が売っていたので、SR-009を買ってしまいました。セールになっていたSRM-727Aも同時に購入。衝動買いとでも言うのでしょうか。
SR-009はSTAXのイヤースピーカの中ではフラグシップのモデルとなります。長らくΩIIとして人気を博していたSR-007(A)のさらに上をいく最高峰の音質で、STAX製品に限らず、現存するヘッドフォンの中でも一二を争うレベルでしょう。
以下のレビューの環境は、PC→DA-06→SRM-727A→SR-009となります。DA-06とSRM-727Aの間のケーブルはAVCTのST-1Q-PCUHDを使用しました。また、電源ケーブルも変更しています。
コンデンサ型ヘッドフォンのメリットとデメリット
ついこの間まで、コンデンサ型のヘッドフォンメーカとして製品を世に出しているのはSTAXくらいだったと思います。Shureがコンデンサ型のイヤフォンを出すと発表してちょっとびっくりもしましたが。
よく言われるメリットとしては、振動板が軽く、音の再現性が高いことです。
一方、デメリットとしては、専用のドライバユニットが必要なことでしょう。プレーヤに直で繋ぐだけでは音が出ないので、間に機器が一つ増えることになります。ポータブル用途ではそれだけで影響が大きいですし、据え置き型でも、各社互換性が無いと考えると、導入するにはかなり勇気が必要でしょう。
SR-009の音質
音質としては最高です。
それ以外の言葉が見つからないほどです。
何より特筆すべきは繊細さ。音の再現性は極めて高く、楽器や声が瑞々しく伝わります。本当に、生音と聞き間違えるようなレベルです。ここまでのレベルはヘッドフォン・スピーカーを合わせても聴いたことがありません。
バランスは完全にフラット。どこも強調されていません。低域から高域まで滑らかに出ます。また、超低域もヘッドフォンと思えないほど沈み込みますし、高音もシャリつかずに伸びきります。まさに「フラットで広帯域」を体現しています。
音場も広く、横幅も奥行きも感じられます。ヘッドフォンの中では最高クラスでしょう。横幅に関しては、HD800のバランス接続に比べるとさすがに分が悪いですが。
SRM-727Aとの接続ですと、どこかで「究極の普通」と書かれているのを見たことがありますが、言い得て妙だと思います。特長は強くなく、けれど最高の音です。
SR-009に接続するドライバ
STAX製のドライバなら基本的に互換性がありますが、SR-009に繋げるとなると、SRM-007tかSRM-727Aのどちらかというのが一般的でしょう。ちょうどヘッドフォン祭に出店していたSTAXのブースで、SR-009を繋ぎ替えて購入を決定しました。
SRM-007tは真空管抵抗です。中音域から高音域にかけて非常に華やかな印象があります。低域も少し膨らむ感じがします。音楽的にとても魅力的である一方、ややノイジーに感じることもあります。
SRM-727Aは石の抵抗です。こちらはかなりフラットな印象。ノイズ感も少なく、特長がまったくないと言っても過言ではないほどの薄味です。また、ボリュームをスルーすることが出来ます。
ブースで両方を試聴し、SRM-727Aを選択しました。007tの高音が少しわざとらしく感じたのと、全体的にフラットな音質が好きだからです。しかし、これは好みの問題かと思います。
総評
世界的に見て、一二を争うヘッドフォンだと思います。再現性をはじめとした基礎能力で群を抜いています。一方、特長が薄いため、キャッチな魅力では無いかもしれません。しかし、一時期納品まで半年以上待たされていた、とのことですから、矢張り魅力は伝わっているのでしょう。
コンデンサ型であるため、専用ドライバが必要となり、導入への障壁は高いのですが、それだけの価値があると思います。