Blooming Wooing Audio

オーディオや音楽についてのblogです。手持ち機器のレビューやイベント参加感想など。

ヘッドフォン祭2014秋に行ってきました!

春に引き続き、ヘッドフォン祭に行ってきました。会場はまたも中野。

前回は開場時刻に行って、並ぶ羽目になったので、今回は昼過ぎに開場入りしました。目論見通り、並ばずに入場出来、一安心。

以下、気になった展示について。

 

McAUDI MD5300 D/A Converter + M81 Headphone amplifier

McAUDIは何だかアイルランドっぽい名前ですが、れっきとした国内のオーディオメーカです。業務用機器なども作られている、質実剛健といった感じのメーカだと感じました。

さて、その新製品、のDAC、MD5300を試聴しました。環境としては、プレーやからMD5300に入れて、同社のヘッドフォンアンプM-81 → HD650(バランス化)となっていました。

一聴して、レベルの高さが判りました。音としてはかなり煌びやかな印象。上から下までくっきりとした音像で、華やかさを感じさせます。どちらかというととぼけた印象のあるHD650で、ここまで音の粒をしっかり出せるのはただ者ではありません。逆に、Edition9あたりを繋げると、刺激的になりすぎるような予感もありますが……。

音のバランスはかなりフラット。分解能、再現性は最高クラス。実力的には文句のつけどころの無い出来です。

ちょっと変わっているのは外寸で、普通のフルサイズのオーディオ機器より、少し横幅が小さいです。しかし、ハーフサイズよりは明らかに大きい。(332mm) McAUDI製品は基本的にこのサイズのようです。本当はハーフサイズにしようと思っていたらしいですが、収まりきらなかったそう。

「未定」となっているお値段は50万ほど、とのことです。勉強します、とは言ってくれましたが、どの程度なのかは判りません。しかし、価格に見合うだけの実力は間違いなく持っていると思いました。

 

ULTARASONE Edition5 Unlimited

限定555本と謳っていたEdition5に「非」限定版が出ると発表されました。うーむ、今までにも7からマイナ・チェンジされた9,10から12と来ていたので5も同じ道を辿るとは思っていましたが、まさか数字を変えすらしないとは……。お値段は約7掛け。思い切った印象があります。

 

さて、実は今までに限定版の方のEdition5も聞いたことがありませんでした。イヤーカップが変わったとのことでしたが、聞き比べても違いが感じられず。やはり、ドライバが音を殆どを決定すると考えて良いでしょう。

肝心の音質ですが、「Edition9を普通に近づけた音」という感じがしました。手持ちの9がどうしても基準になってしまいますが、5にあそこまでの個性はありません。よく言えば、もっと洗練された大人の風格、と言ったところでしょうか。

密閉型らしく、音場の広がりは控えめ。帯域バランスはフラットで、分解能は高いものがあります。再現性にはややUltrasone特有の癖が感じられます。

全体的に見て、高い能力を持ったヘッドフォンです。基礎的な性能としては、9よりはかなり高いと思います。ただ、強烈な個性と言うものはありません。かといって、たとえばAKGのK812ほどまで、高いバランスで無色に構築できているわけでもなく、やや中途半端な印象は拭えません。一つ、メリットとしては密閉型で、サイズもそこまで大きくはないので持ち歩き可能です。

 

そんなこんなで、とても楽しませて貰いました。

次は来年の5月だそうで、今から楽しみです。

 

そうそう、今回は物欲に負けなかったことを報告しておきます。

HS-BW-IIのレビュー (AVケーブルテクノロジーズ)

AVケーブルテクノロジーズのスピーカーケーブル、HS-BW-IIのレビューです。

最近、雑誌などで目にすることも増えてきた、知る人ぞ知る名ケーブルです。

 

14対の導体による独特な構成

HS-BW-IIは極めて、独特な構成をしているスピーカーケーブルです。

通常、スピーカーケーブルの構造は、片側につき、行きと帰りの2本の導体で出来ています。

しかし、HS-BW-IIはなんと、14対の細い導体を一本のケーブルに纏めることで、音域のバランスと抵抗の低さを両立しているとのことです。

しかも、低音と高音で導体の太さが違うという徹底ぶり。設計者のこだわりが感じられます。

 

バイワイヤリング対応?

商品説明に「バイワイヤリング対応」と書いてありますが、普通のスピーカーでも問題なく使えます。実際、NS-1 Classicsはバイワイヤリング方式に対応していませんが、端子を一つに纏めることで、通常のケーブルとして性能を発揮しています。

 

音質

非常に素晴らしいです。

特筆すべきは音域の広さ。二種類の導体が功を奏しているのか、低音も高音も、極めてレンジが広い。

さらにバランスの良さに関してもかなり高いものを持っています。ややかまぼこ気味で、中音域を綺麗に鳴らしています。その上で、低音はしっかりと存在感を持って聞こえて来ますし、高音も繊細に慣らしきります。

総合的に見て、10万クラスのケーブルでは太刀打ち出来ないのではないでしょうか。そのくらいのポテンシャルを感じました。

 

総評

素晴らしいです。癖無く、システムのポテンシャルを引き出してくれるような、最高級のスピーカーケーブルです。設計上、ややケーブル自体が太く取り回しが悪いのが難点ですが、音質についてはケチの点けようがありません。

シンガポールのオーディオ事情(ヘッドフォン編)

前回、シンガポールのオーディオ事情のうち、ヘッドフォン以外について書きました。今回はヘッドフォンに絞って書きたいと思います。

 

シンガポールは日本に比べてスマホタブレットの普及率が高く、電車内などで操作している姿をよく見かけます。それに伴って、イヤフォン市場もかなり盛り上がっているようです。さすがにポータブルアンプを使っている人は滅多に見かけませんでしたが。

 

シンガポールでヘッドフォンを買おうと思った場合、行くべき店は基本的に2つだけです。国土が狭いこともあって、こういった専門店はかなり集約される傾向にあります。

 

Jaben

行くべき店の一つ目はJabenのシンガポール店です。日本にも進出しているので、ご存じの方も多いかと思います。前回書いた、Adelphiの中にあります。今は2階にあると思います。以前は4階にありました。

店に入る前に、外側のディスプレイに目が向きます。ちょっとそこらのコレクションとは質が違います。世界最高額のヘッドフォンと名高い、SennheiserのOrpheusや、「完全」オープン型として名を馳せた、AKGのK1000が何気なく飾ってあるのです。ちなみに、試聴させてくれ! と頼んだことがあるのですが、すげなく断られました。オーナーのコレクションらしいです。

 

さて、店内に入ると、壁一面にヘッドフォンが並んでいます。試聴も自由に出来て、かなり敷居が低い感じ。ただ、最高級機はさすがにおいてありません。店員に頼めばさせてくれますけどね。特にオーバーヘッドのヘッドフォンはかなりの品揃えです。

さらに、特筆すべきはポタアンの豊富さです。ショウケースに大量に並んでいて、店員に頼めば、いくらでも試聴させてくれます。定番のモデルはほとんど揃っています。と、いうかシンガポールの旨として、ここになければ国内には無いです。

 

お値段の方ですが、日本より少し高いことが多いです。ただ、オーディオに限ったことではなくシンガポールの一般的な話として、セットで抱き合わせ販売していることが多いです。その場合、かなりお買い得な値段になっていることがあるので、組み合わせによってはかなり魅力的です。

 

Stereo

そのまんまな名前ですが、ヘッドフォン屋です。前述のJabenに比べると、マニア度がやや低いと思われます。店は2店有り、OrchardのIONとDhoby GhautのPlaza Singapulaにあります。どちらも駅から直結している、人気のショッピングモールです。

こちらは一般的なイヤフォンの品揃えが豊富です。Audio TechnicaやSONYといった、日本製のイヤフォンもかなり売っていますし、ShureやUE、Sennheiserなども各モデル揃っています。ハイエンド帯まできちんとカバーしていて、AKGのK3003やSennheiserのIE800なども普通に売っています。

ポタアンも種類は少ないですが、取り扱っています。オーバーヘッドはそれなり。また、iFi Audio製品も置いてあります。一見、ライト層向けですが、マニアでも満足できる品揃えです。一時期、なぜかSTAXのSR-009まで置いてありました。(凄い値段になっていましたが)

お値段ですが、こちらのお店、Facebookで「Like」を押すと、一律で5%引きになります。高級機だと、かなり大きいです。また、こちらもやはりセットで販売することがあり、iFi製品などは、日本に比べると相当お買い得になります。以前、SE846を買うとUE900がついてくる! という謎な組み合わせで売っていたこともありましたが。

 

その他

JabenとStereoで手に入らない機種がいくつかあるので、紹介しておきます。

まず、Ultrasone製品は、入手が非常に困難です。恐らく、正規の代理店が無いのだと思いますが、まず売っていません。Adelphiの中に、各店が個別に輸入した物が売っていることがあるくらいです。お値段は恐らく、時価になります。

また、Grado製品もやや取り扱いが少ないように思います。こちらは、前回に書いた、Sim Lim SquareのSong Brothersというお店でPS1000まで売っています。意外と安いです。

 注意点として、カナル型イヤフォンのイヤーピースは品揃えが悪いです。あってもサイズがMしかないことが多く、人によってはかなり苦労するでしょう。私は耳の穴が大きく、Lを探していたのですが、結局どこにも見つかりませんでした。

 

まとめ

とりあえずJabenとStereoに行ってください。なければネット通販に頼るくらいしかありません。国土が狭い分、行くべき所が集まっていて、便利だと思います。

お値段は商品によってまちまちですが、旅行などの場合は免税なども利用できるので、安くなることも多いと思います。

シンガポールのオーディオ事情(非ヘッドフォン編)

2014年の頭までシンガポールに住んでいました。(イギリスに住んでいたこともありますが……)ちょっと海外のオーディオ事情について書いてみようと思います。ただ、ヘッドフォンはちょっと事情が異なるので、今回はスピーカーやアンプ、プレーヤーなどを中心に扱っている店です。

 

シンガポールのショッピング事情

そもそも、シンガポールではショッピングの事情が日本とは異なります、

向こうでは、お店はショッピングセンターに入っていることが多く、またセンターごとにお店の棲み分けが為されています。かなり曖昧なところもありますけどね。

たとえば、高級ブランドが多く入ったショッピングセンターや、もっと普及価格帯のお店が多いところ、あるいは家具屋ばかりだったり、楽器屋しかないセンターもあります。さらに、日系企業が多い、日本人御用達のショッピングセンターや、同様にフィリピン人御用達やマレー系御用達などの人種別に棲み分けがされているケースもあります。

そんな中に、オーディオ専門店が集まるショッピングセンターも当然存在します。

 

 

The Adelphi

そんなわけで、高級オーディオ店が集まるショッピングセンターといえば、The Adelphi(アデルフィ)という場所になります。はっきり言って、シンガポールピュアオーディオをやろうと思ったら、ここ以外に来る必要はありません。ここで全て揃いますし、ここに無かったら、シンガポール国内のどこにも無いと思った方が良いです。

 

The Adelphiはシンガポールの中心部に近い、MRT(地下鉄)のCity Hall駅から、歩いて3,4分といったところでしょうか。なぜか道に屋根があるので、雨が降っていても、横断歩道を渡るとき以外は濡れずに行けると思います。まあ、シンガポールはタクシーがすごく安いので、気軽に利用できますが。運転手に言えば、大体連れて行ってくれます。運が悪いと場所を知らないのですが、「Funanの隣」と言えば通じます。ちなみにFunanとはAdelphiの隣にある、電器屋が多く集まったショッピングモールです。

 

Adelphiの中の、大体2/3くらいはオーディオ屋です。他に美容院などがちらほらあります。下の方に、怪しげなマッサージ屋がいくつかあるのですが、利用したことはないので実態は判りません。

 

入ってみると判るのですが、オーディオ屋、ほとんど閉まっています。扉が閉ざされ、店内の照明も消えています。しかしドアに張り紙がしてあって、「用があったらここに電話してね!」と(もちろん英語で)書かれています。どうやら、同じショップが複数のブースを借りていて、全店舗に人員を配置出来ないみたいです。

 

取り扱っている物は日本のオーディオ屋とあまり変わりません。欧米のブランドが中心ですが、日本のYAMAHAやMarantzなどもかなり見かけます。ヨーロッパが多いでしょうか。Cambridge AudioやDynaudioをよく目にしました。

 

買い物は難しい?

ちなみに。こちらの店員さん、かなり商魂たくましく、試聴して買わないなどと言おうものなら、「どこが悪かった?」「どんな風にしたいんだ?」と質問攻め。適当にお茶を濁そうにも許してくれません。はっきり気に入らない点を伝えれば、納得してはくれるのですが……。

 

さらに。値札がついていないことが多いです。つまり、店員さんとの値段交渉が必須です。上手く駆け引きすれば、日本で買うよりかなり安くなりますが、下手をすると、相当にぼられるようです。(幸い、オーディオ店で失敗したことはありませんでしたが……)

商談の途中で、国籍を訊いてきたら注意した方が良いかもしれません。基本的に日本人はカモだという風潮が、シンガポールにはあります。

最低でも、日本での値段を事前にリサーチして、予算を決めてから挑むべきだと思います。

 

 

Sim Lim Square & Sim Lim Tower

さて、Adelphi以外でも店が無いわけではありません。ちょっとピュアから外れたことをやろうとする場合、別のショッピングセンターに行かないといけないのです。

それがSim Lim SquareとSim Lim Towerです。名前が似ていることからわかるように、かなり近く、交差点を挟んで反対側。

場所はちょっと不便です。一応最寄り駅はBugisとなりますが、少し歩きます。他にLittle IndiaやDhoby Ghaut辺りもあまり距離が変わりません。3つの駅のど真ん中にあるのですね。一応バス停は近くにありますが、シンガポールに慣れていないと上手く利用できないと思います。

一番確実なのはタクシーです。Sim Lim Squareを知らない運転手はシンガポールにはいません。確実に通じます。

 

さて、まずSquareの方ですが、こちらはパソコン関連のショップが集まっているショッピングセンターです。秋葉原の、末広町に近い辺り、とでも言いましょうか。(最近はかなりPCショップが減っているようですが) パソコンのパーツや本体、周辺機器、スマホなどを扱う店が多いです。

そのため、PCオーディオをやりたい人はこちらに来る必要があります。USBオーディオ機器やサウンドボードはこちらの方が品揃えが良いからです。他に、3軒ほどオーディオ屋もありますが、こちらはAdelphiに行った方が良いかも。

 

また、Towerの方ですが、こちらは自作派向けです。銅線や熱収縮チューブ、あるいはスピーカーユニットなどが売っているのはこちらです。同じ秋葉原でもラジオデパートの様な佇まいです。工具などもこちらでお求めを。

 

このSim Limの二つのショッピングセンターでは基本的に値札がついているので、レジに持っていくだけで済みます。ちょっと安心。

 

 

気になるお値段は

日本に比べても、まちまちです。安かったり高かったり。為替の変動の影響が大きいので、時期によってかなり違うと思います。これを書いている時点では円安なので、安くは感じないかと思います。

 

まず、日本と違って「国内メーカー」が基本的にはありません。Creativeはシンガポールのメーカーですが、別に安いわけでもありません。

 

日本メーカーですが、国内よりやや高め。Audio technicaやMarantzなどはちょっと乗ってるくらいですが、SONYなんかは結構上乗せされています。まあ、輸出入の費用がかかっているので当然ですが。

 

次に欧米メーカーですが、これがまちまちです。はっきり言って、輸入代理店のマージン率に依存します。

Cambridge Audioなどはかなりお安いです。(日本の代理店がマージンを多く取っているだけですが)DynaudioやB&Wも少し安かったように感じます。Harmanは逆に少し高めに感じました。

 

まとめ

とりあえず、The Adelphiに行くだけで済みます。ここで無かったら諦めるしかありません。(ネット通販などもありますけど)品揃えは決して悪くないので、よほど変なこだわりが無い限り、問題はないでしょう。後は店員との交渉次第で、かなりお求めやすくなりますよ。

 

K812の試聴レビュー (AKG)

AKGのフラグシップヘッドフォン、K812の試聴レビューです。

 

今までのレビューとは異なり、K812を所有していません。イベントや店頭で試聴したときの感想です。そのため、やや聞き込みが足りない可能性があります。

 

私が最初にK812を試聴したのは、2013年の12月にシンガポールで行われたMook Headphone Festival(多分、第2回だと思います)でのことです。今回のレビューはその時の感想が基になっています。

輸入代理店のブースにひっそりと置かれていたのですが、まったく宣伝されておらず、誰からも注目されていませんでした。とてももったいなことだと思いました。

ブースには他のAKGのヘッドフォンが一通り置いてあったほか、会場には多くの優秀な機種があったため、比較対象には事欠きませんでした。

 

その後、日本で数回聴く機会がありましたが、あまり印象は変わりませんでした。

 

AKGのフラグシップに恥じない音

音の印象ですが、やはり「AKGの音」と表現するのがぴったりです。それまでのフラグシップであったK701(マイナチェンジ版もありますが)の音の正統進化版だと考えて、まったく問題がないと思います。

とにかく、自然で滑らかです。帯域バランスはこれまで経験が無いほどにフラット。上から下まで極めてバランス良く鳴らしてくれます。また、上も下も非常に帯域が広く、ヘッドフォンでここまで広帯域なものは中々ありません。

また、AKGの最大のストロングポイントである音場の広さはやはり健在。それどころか、フラグシップだけあって、さらに広大になった印象です。

分解能、音の再現性もかなり高い実力を誇っています。基礎性能的には、ヘッドフォンの最高峰の一つに入るでしょう。

音の線はやや細め。少しモニタライクに聞こえるかも知れません。そのため、メタルやロックなどには向かないかもしれません。引き替えに、かなりの美音であるため、クラシックなどには最適でしょう。

 

K701との比較

会場にK701もあったため、比較しました。普段使ってますしね。

価格帯がかなり違うため、当然といえば当然なのですが、基礎性能の差が段違いです。特に帯域の広さ、分解能などの部分に関してはかなり大きな差が出ます。

また、バランスでは、K701はあまり低音が出ないのですが、K812の方はきちんと慣らしきります。それでいて中高音が埋もれないのが凄いところなのですが……。

音質面以外では、K812になって、能率がかなり良くなりました。ポータブル機でもなんとか鳴らせるくらいにまで高くなったように思います。その分、ノイズに弱くなったとも言えますが……。

 

 

HD800との比較

恐らく、価格や音質から考えて直接的に競合するのはこちらでしょう。SennheiserのHD800と比較してみました。

基礎性能は正直、甲乙付けがたいです。音場の広さ、分解能、源音忠実性。すべて伯仲しています。

音場についてはHD800の方がゆったりと広がっている感じ。K812の方がやや位置が明確に感じられました。分解能はややHD800の方が高い。原音忠実性はK812に軍配が上がる気がします。しかし、いずれもとても僅かな差です。両機種とも、とても高いレベルで張り合っています。

 

 

しかし、もし私が選ぶならK812です。なぜなら、K812の方が音のバランスが自然に感じられるからです。HD800は高音部に、強調された部分があるように感じられます。ポップスなどだと、そこが煌びやかに表現されて、それはそれで魅力的なのですが、時折鼻につくことがあります。K812にはそのような不自然さが感じられる部分がまったくないのです。

 

 

私の中でそういう位置づけなのですが、持っているのはHD800です。タイミングの問題だとしか言い様がありません。K812を初めて聴く、ほんの2週間前にHD800を買ったばかりであったため、そこでK812の購入に踏み切れなかったのです。そのうち、手に入れようとは思っていますが、いつになることやら。

 

総評

非常に高い位置でバランスの取れた、とても優秀なヘッドフォンです。総合的に見た場合、K812を上回るヘッドフォンは見当たりません。SR009くらいでしょうか。価格もそこまで極端な値付けでも無いです。

なぜこれが国内でベストセラーにならないのか不思議なくらいです。広告の差なのでしょうか?

 

AKG Superior Reference Headphones K812 【国内正規品】

AKG Superior Reference Headphones K812 【国内正規品】

 

 

Edition9のレビュー(ULTLASONE)

Ultrasoneの密閉型ヘッドフォン、Edition9のレビューです。

 

Edition9は2006年に限定500台で発売になった当時のフラグシップヘッドフォンです。当時としては異例極まりない定価20万円超えだったのにも関わらず、最終的には1000台以上生産されたとのことで、人気の程が窺えます。

シリアルナンバが記載されていますが、私の物は100番をちょっと超えた辺りです。個人的に好きな数字なので、微妙にお気に入りです。

すでに生産終了しているので、新品を手に入れるのはもはや不可能です。中古も滅多に出ないようで、ときには定価よりも高く取引されていることすらあるようです。その実力もあって、かなり貴重な逸品です。

 

Edition9の音質

良い意味で他に類を見ない音です。基礎性能は非常に高く、分解能、解像度、帯域の広さともにヘッドフォンとして最高峰に位置しています。

密閉型だけあって、音場はやや狭めです。そのためフルオケのクラシックなどには向きませんが、打ち込み系やロック、パンク、メタルなどには最適でしょう。とても濃い音が楽しめます。

バランスとしてはややドンシャリ系。音が硬く、高音は少し刺激的です。大人しく楽しめるタイプではありませんが、バンドサウンドなどではそのノリの良さを楽しめます。

 

 

さて、Edition9の最大の特長は音の太さと分解能の両立です。高解像度を誇るヘッドフォンの場合、モニタライクとでもいうべきか、音の線が細いヘッドフォンが多いです。分解能は高いものの、音の迫力や勢いという点において、やや弱いのは仕方が無いことです。逆に勢いが感じられるヘッドフォンの場合、ある程度分解能を犠牲にしている面があるように感じられます。

しかし、Edition9はおそらく、世界で唯一、音の太さと分解能を両立させたヘッドフォンです。聴いていてノリノリで楽しめる迫力を持ちながら、聞き込めばどこまでも応えてくれる高い分解能を保持しています。これは発売から数年が経過した今となっても、ほかのどんなヘッドフォンも為し得ていないことです。

 

結果として、Edition9は世界最高の低音を鳴らすことの出来るヘッドフォンです。超低音まで沈みきる帯域の広さ。迫力を持ちながら、繊細な部分まで描き出す音の再現性。ここまで綺麗で、しかも楽しめるベースラインを出せるヘッドフォンは他にありません。まさに、世界最高の低音。これ以上の物は現状ありません。

 

Edition9の特性

密閉型でインピーダンスが低く能率が良いため、その気になれば外で使うことも可能です。

また、他の高級ヘッドフォンに比べ、環境をあまり選ばないことも特長の一つです。アンプやプレーヤーの影響が比較的少ない機種です。どんな環境でも、「Edition9の音」になるといって過言では無いほどの、個性的なヘッドフォンです。

 

 

HD800との比較

リファレンスとして使用しているSennheiserのHD800と比較してみました。

解像度はほぼ互角かややHD800が優勢です。音場もHD800の方が広く、帯域バランスもフラットです。再現性もHD800の方が高いでしょう。

などと書くと、圧倒的にHD800の方が優れているように感じられます。たしかに、総合的な基礎性能で現状、HD800は最高峰です。Edition9も十分すぎるほどに優秀ですが、基礎性能においてはさすがに分が悪い。

 

しかし、Edition9は唯一無二の特長を持っています。最高のヘッドフォンではないかもしれません。しかし最強のヘッドフォンなのです。

オールマイティに使うのならばHD800を選ぶべきでしょう。しかし、この低音。そして迫力と繊細さの同居。この二点だけで、HD800をも上回れるほどの魅力を備えています。

 

総評

最高の低音を奏でる、世界最強のヘッドフォンです。もし、一台だけヘッドフォンを買うならEdition9はお薦めしません。得手不得手がはっきりしていますし、性能的にもっと良い機種は存在します。

しかし、その特長と魅力を理解すれば、これ以上のヘッドフォンはありません。二台目、三台目として、存分に力を発揮してくれる異端な天才です。

 

 

ULTRASONE ヘッドフォン edition9 密閉ダイナミック型

ULTRASONE ヘッドフォン edition9 密閉ダイナミック型

 

 

 

 

PS-35のレビュー(AVケーブルテクノロジーズ)

AVケーブルテクノロジーズ電源ケーブルPS-35のレビューです。

 

PS-35は切り売りの電源コードです。プラグはついていないので、別途用意する必要があります。

 

私はPS-35を3本持っています。一本目は壁コンセント SWO-XXX と電源タップ e-TP60 の間、二本目はプリメインアンプ sa1.0、最後の一本はヘッドフォンアンプである Black cube linearに使用しています。

 

PS-35の音質

付属の電源ケーブルからPS-35につなぎ替えると、あまりの変化にびっくりします。かなり優秀なケーブルであると同時に、リーズナブルな点も見逃せません。体感ですが、10万円クラスのケーブルと比べても引けを取らない名器です。

音のバランスとしてはかなりフラット。よく聞き込むと少しかまぼこ形かもしれません。とても音楽的な響きを有しています。

低音はかなり深いところまで沈むように感じます。量は若干控えめなので、ベース命! な人には向かないかと思います。逆にジャズやクラシックなどウッドベースが好きな人には代えが利かない一品だと思います。もちろん、エレキベースでもその魅力は存分に発揮されます。

高音はやや控えめ。あまり強調されないため、キラキラした爽快感はありません。その分、不自然さはなく、素直に伸びていく印象です。

特筆すべきは中音域の音の綺麗さです。ボーカルや弦楽器、木管楽器などがとても心地よく聞こえます。美音を目指しているのなら、まずはこのケーブルを試すべきだと断言できます。

また、分解能、音の再現性に関しては白眉です。他の追随を許さぬ出来です。

 

 

PS Audio Prelude との比較

他に持っている電源ケーブルがこれしかないので必然的にPS Audio Preludeとの比較となります。

 

まず、バランスが大きく異なります。Preludeは明らかに低音が強調されています。一番低いところ、というよりはベース付近の周波数なのでしょうか。BoseやBeatsのヘッドフォンのよう、と言うと解りやすい人もいるかも知れません。

一方、PS-35はかなりフラットです。癖がないと言うか、特長がないというか。かなり上質で、慎重に設計されているのが聞いただけで判ります。

 

一番大きな違いは帯域の広さです。Preludeに比べ、PS-35の方が、圧倒的に広帯域です。低音も高音も明らかに広く、伸びきっているのが判ります。高音域がきちんと出るので、解像度や音の再現性も圧倒的に差があります。

帯域が狭い分、Preludeには力感があります。ガツっとパワフルに聞かせたいときはこちらの方が向いているでしょう。しかし、基礎的な実力があまりに違うため、聞き比べるとどうしてもPS-35の方が優れています。

 

総評

純粋に電源ケーブルとして非常に素晴らしい製品です。広帯域・高解像度を実現していて、しかも価格もあまり高くありません。切り売りなのでプラグを自由に選択できるのも楽しみの一つです。

特にアコースティック系の音楽を聴く場合には、一本持っていて損は無い製品です。そう力強くお薦めできます。