Blooming Wooing Audio

オーディオや音楽についてのblogです。手持ち機器のレビューやイベント参加感想など。

Perl Proのレビュー(Denon)

Denonのワイヤレスイヤホン(TWS)、Perl Proのレビューです。

 

以前より、音質にかけては有線の方が圧倒的に有利だと感じておりました。もちろん、ワイヤレスの取り回しの良さやノイズキャンセリングといった利便性については認識していたのですが、音質があまりに違いすぎるため二の足を踏んでいました。

 

今回、Perl Proを聴いて、ようやく十分に満足できる音質のワイヤレスイヤホンが出たと感じたので購入しました。(だいぶ安くなってきましたし)その中で、今までの自分のオーディオ感を覆されるような転換があったと思います。

それなりの値段がする機種ですが、それだけの価値があると思います。

Perl Proについて

日本におけるオーディオの老舗、Denonが出したワイヤレスイヤホンです。完全に左右が分離しているTrue wireless(TWS)のタイプになります。本体の他にケースがついてきて充電などに使用します。

このシリーズははPerl ProとPerlの2種類が出ていますが、名前を見れば判るとおり、Proの方がフラグシップという扱いです。今回、Proの方を購入しました。

接続はもちろんBluetooth。リスニング用フラグシップの割にCodecはやや特殊で、aptX Adaptiveに対応している一方で、LDACには対応していません。高価格だけあって、ノイズキャンセリングや外音取り込み、マルチポイント接続などの機能は一通り揃っています。アプリ上でイコライザもかなり細かく設定できます。

 

Perl Proの特長

最大の特長として、聴力を測定し個人にパーソナライズ(最適化)するよう音質を調整できる機能を有しています。他にもいくつか似たような機能を持っている機種はありますが、Perl Proの良いところは、それを自動でやってくれるところです。音を流すと同時に耳の中をモニタリングしており、今出している検査用の音にどのくらい反応しているのか計測できるそうです。

(他の機種は、聴力検査よろしく音が聞こえたらボタンを押すものが多いです)

音質については後で述べますが、このパーソナライズ機能の高価はすさまじいものがあります。アプリ上で機能をオン/オフできますが、切り替えてみると明らかに音が違います。オンにすると、音の明瞭さやバランス、音場までレベルが3つくらいは上がるように感じます。

 

パーソナライズの結果はアプリ上に表示されますが、正直見てもあまり意味が判るものではありません。。。

 

また、空間オーディオ機能を備えているところも比較的レアなところです。音場間がより包み込まれるように変化するもので、音源にもよりますが、比較的違和感なく補正してくれます。イヤホンの脳内定位が苦手な人にはかなり良さそうです。

 

Perl Proの音質

以下のレビューは基本的にパーソナライズ機能を有効にした状態でのものです。

全体的に音の像がくっきりと聞こえ、分離がはっきりしている傾向にあります。音が太く感じられ、ヘッドフォンで言うとGradoのようなイメージです。

帯域バランスはデフォルトだとかなりのロー上がりです。中音域は比較的良く聞こえます。高音域は、帯域としての伸びは悪くないと思いますが音量としては少し控えめ。とにかく低音が強いので、私はアプリ上で低音を控えめになるように調整しています。

音場はデフォルトだと明確ですがやや狭め。空間オーディオ機能を有効にすると、ゆったりと広がるように変化します。音の一つ一つを分析的に聴くなら無しの方が良いと思いますが、音楽全体をゆったりと楽しむなら有効にするほうが心地良いと思います。

出てくる音がくっきりとしていて割と元気が良いので、ポップスなどの歌ものにはかなり向いていると思います。逆に、かなり主役が目立つ機種なので、フルオーケストラの楽曲などではあまり魅力を感じませんでした。

 

全体として考えると、今までに聴いたワイヤレスイヤホンのなかで最高級のものです。他にも5万円以上のワイヤレスイヤホンを(発売される度に)いくつも試聴してきましたが、ここまでのものはなかったと思います。(Perl Proの発売から時間が経ったこともあって、同レベルのものも出てきたとは思います)

とは言え、さすがに最高級の有線イヤホンをちゃんとしたDACやアンプと繋いだときと音質を比べると分が悪いです。ただ、ワイヤレスならではの取り回しの良さや、外出時にノイズキャンセリングや外音取り込みを使えることを考えると、こちらを選ぶ選択は十分に有り得ると思います。また、同価格帯の有線イヤホンとなら、ほとんどの機種を上回れるように思います。

 

ピュアオーディオに対する意識の転換

少しPerl Proそのものの話題から外れるのですが、この機種は「良い音とは何か」ということを問いかけるきっかけになると感じました。

今まで、オーディオにおける良い音、とはソースに記録された音を極力劣化させずに耳まで届けること、と認識されてきたように思いますし、私もなんとなくそう感じていました。良い音のため、極力音に影響を与えないよう、接点を減らしたりケーブルの抵抗を減らしたり、ノイズを除去したりしてきたわけです。そこに、音の信号に対して積極的に変化を加えるというアプローチは一般的でなかった。元の、生の音楽に一番近づけようとするとそう考えるのは自然なことです。

今回、Perl Proが行ったのはその真逆で、測定された結果から計算し、最適な変化を音の信号に与える、という積極的なアプローチです。一見、音に変化を与えることで元の音楽から離れていってしまうようにも感じます。

しかし深く考えてみると、耳という受信機に個人差がある以上、イヤホンから元に近い音が出ていたとしても、それが人に認識される際には耳の個人差が影響することを避けることは出来ません。ならば、その個人差をソフトウェア的に補正することで、最終的に人が聴く音楽を元の音に近づける、ということをしていると捕らえれば、Perl Proのパーソナライズ機能は真の意味でのピュアオーディオなのかもしれない、と感じました。

 

総評

Perl Proはワイヤレスイヤホンの中で、最高級の音質を持つ機種だと思います。まだ最高級の有線イヤホンの音質には達していませんが、同価格帯のものとなら十分以上に勝負になります。

また、フルワイヤレスだからこその機能も豊富で、外出時に使用するならとても良い選択肢になると思います。