ヘッドフォン祭2016秋に行ってきました!
さて、半年に一度の祭典、ヘッドフォン祭2016秋に行ってきました。会場はいつもの通り、中野サンプラザ。アクセスの悪さはいつもの通り。
今回は11時過ぎに中野につきました。ちょっと並びましたが、すぐに会場入りできました。うーん、ちょっと来場者が減っている気がします。ブームが去りつつあるのか……?。
前回、課題だったiPod Classicとは実は既にお別れしておりまして、iPod Touchを導入しました。Classic非対応機種が増えてきているのですが、今回は問題なくブースを回れました。
物販では、前回何とか我慢したKSE1500をやっぱり買ってしまいました。こんなことなら半年前に買っていても同じだったかも? ちゃんとしたレビューはまた後日。
以下、気になったもの試聴レビュー。今回は実り多き秋だった気がします。
Sennheiser HE-1
さて、Sennheiserの超弩級コンデンサ型ヘッドフォン(+ドライバ)HE-1をようやく聴くことが出来ました。お値段なんと5万ユーロ。
さすがに音質は抜群です。レンジと音場の広さ、帯域バランスの良さ、音色の綺麗さ、正確さ。どれをとっても最高級品です。
何というか、Sennheiserがコンデンサ型で作ったらこんな感じだろう、というそのままでした。
同じコンデンサ型の名器であるSTAX のSR-009と比較すると、音の再現性、緻密さや、レンジの広さではほぼ互角の勝負だと思います。どちらもコンデンサ型らしい、繊細な音色で、基本的なスペックでは世界最高の2つでしょう。
差がつくのは音場の部分で、これはHE-1に軍配があがります。SR-009は音場の広さ、明瞭さはそこまでではなく、耳元に近いところで展開します。音場だけで言うなら、HD800やK812に比べると厳しい部分があるのは否めません。(それでも十分高いレベルですが)
HE-1はそのHD800を凌ぐほどの包み込むような音場感です。ヘッドフォンと思えないほど広く、位置も明確です。ただ、ドライバを合わせても価格差が10倍ほどありますが……。
おいそれと手が出せるお値段でないことはたしかです。しかし、紛れもなく、現時点で世界最高のヘッドフォンでしょう。
FOCAL UTOPIA / ELEAR
さて、こちらも高価格なヘッドフォン。ダイナミック型です。UTOPIAは実売50万円超、ELEARでも15万円以上するのではないでしょうか。整理券を貰って試聴してみました。下の感想は基本的にUTOPIAのものです。
開放型らしく、抜けが良い音がします。レンジはかなり広く、下から上まで癖がない感じです。音場もそこそこ広く、綺麗な音色。欠点が見当たらない。
かなりモニター寄りの音がします。余韻が少なく、かっちりとした音作り。ソースの音をそのまま正確に出すことにかけては、他に並ぶ物がないでしょう。いうならばMDR-CD900STの音色で基礎能力を極限まで高めた印象です。
価格に見合うのかというと、割と難しいところ。単体50万円だと、HD800とPS1000eとT1を買ってもお釣りがきてしまうわけで……。SR-009A + SRM-727Aでもまだ余る。うーん。そこまでの価値があるかと言うと……。でも、凄く良い音がします。
ELEARはUTOPIAに比べると、コストパフォーマンスは抜群に良いかと思います。(それでもHD800より高いですが)値段は1/3ですが、音質的にそこまでの差はないかと思います。
オーディオテクニカ ATH-LS400
オーテクの新商品、BA4基搭載のイヤフォンです。
BA型らしからぬ音がします。前の、CKR10のときも驚きましたが、オーテクはけっこうな変化球を投げてきますね。
基礎性能はお値段なり。バランス的にはかなりロー上がりな印象を受けました。低音が不自然に膨らんでいる事はないですが、かなり存在感があります。帯域はそこまで広くないので、フルオケとかだと少し厳しいかもしれませんが、ロックやメタルは楽しく聴けそうな印象でした。
Sony NW-WM1Z
さて、天下のsonyが出した、30万円のDAP。Qualiaを彷彿とさせますね。
さて、本体は3Nの無酸素銅から削り出した筐体に金メッキを施したそうで、大変重たいです。iPod Classic + SU-AX7より重たい。
ボディに銅や金メッキを使って、何の意味があるのか担当者に尋ねたところ、本体のグラウンドとして機能しているとのこと。静電容量を増やしたいそうです。その際に、外部からの電波を拾って電圧がずれないようにしたい、と。金メッキはサビ防止のため。銅は錆びますからね。
百歩譲って無酸素銅の本体は意味があるかもしれませんが、金メッキは効果があるとは思えません。サビ防止だけなら他にいくらでも安価なメッキが出来ますし……。通電する箇所に金メッキをするのは抵抗値の関係で理解できるのですが、外側に露出している部分に施しても、効果は不明です。ちなみに低価格モデルのNW-WM1Aはアルミのため、軽いです。
さて、肝心の音質ですが、決して悪くはありません。バランスはややロー上がり。レンジは広いですし、音のきめ細かさも特筆物です。操作性も良く、直観的に使えます。ハイレゾ再生はもちろん、バランス出力も可能。
1Aでも音質の差はあまり感じませんでした。単体でこの音質なら、十分候補に入ってくるレベルじゃないかと思います。
ただ一点、なぜか独自端子です。なぜ普通のMicro USBとかじゃ駄目だったのか。妙に無駄なこだわりを感じる製品でした。
DITA Dream
シンガポールのメーカー、DITAの新フラグシップモデル。またプロト品とのことでした。
AnswerやTruthと同じく、ダイナミック1基のシンプルな構成。最近の高級イヤフォンの流れでは珍しいですね。
音質はかなり魅力的です。ダイナミック型の特長である艶やかな音色と、高い解像度を両立しています。バランスもかなりフラット。レンジもかなり広めです。唯一無二のものでしょう。個人的にはかなり好みです。
お値段は2000USドル程度とのこと。シンガポールドルじゃなくて? と確認したのですが、USとのことです。かなり高価な部類でライバルはカスタムばかりの価格帯ですが、十分勝負になるクオリティだと思います。
Westone W80
高級イヤフォンの老舗Westoneの新フラグシップ。ユニバーサルモデルです。BA8基とのことで、Masonに次ぐほどの物量。
バランスはロー上がり。音域レンジがやや狭いです。が、特筆すべきはその音色。ヴォーカルがここまで魅力的に聞こえるイヤフォンはほとんどないと思います。声が生々しく、それでいて品がある。ヴォーカルが持つちょっとした表現を余さず伝えてくれます。
レンジの狭さが逆に中音域を引き立てているような印象です。ヴォーカル重視なら一、二を争うほど有力な選択肢になる機種だと思います。
GRADO GS2000e
GRADOの名器、GS1000の後継機とのことです。見た目は2000と1000でほぼ変わらず。
さて、音色ですが、良くも悪くも、高級ヘッドフォンっぽくなりました。GRADOと言えば、PS1000をはじめ、暴れん坊なイメージなのですが、GS2000eはGRADOらしさを残しつつも、全体的に纏めてきた印象があります。
完成度が高くなった反面、ポテンシャルは減った気がします。個人的にはPS1000とかのほうが、特長が出ていて好きですが……。
JVC Kenwood SU-AX01
さて、期待のHPAです。SU-AX7の後継機、SU-AX01。DAC内蔵ヘッドフォンアンプ。
機能的に、DSD対応。バランス出力対応が目玉。また、Androidに対応。あと、再生中に充電しながら使うと高音質化するという珍しい機能を搭載しました。同軸のデジタル入力がある点も珍しいです。筐体は少し大きく、重くなりました。
そんなわけで、期待しながら聴いたのですが、うーん。
はっきり言って、AX7と同じ音がします。まあ、試聴環境のソースがDSDではないし、下流もシングルエンドのK3003なので、新機能を全然生かせていないのは事実です。が、ソースとイヤフォンが同じだと、ほとんど同じ音です。Edition7とEdition9よりも近い。
ブースにいた技術の人とも話しました。アンプ部はディスクリートにしたとのことですが……。
まあ、時代に合った機能拡張といったところです。基礎的なDAC、アンプのクオリティについては買い替えたいと思うほどの変化は感じられませんでした。
ただ、今でも私はSU-AX7は素晴らしいポタアンだと思っています。十分、今でも有力な選択肢になる機種です。
KuraDa KD-FP10 響
前々から、変な形のヘッドフォンがあるなあ、と思いつつも試していなかったのですが、今回初めて試聴しました。なんとなく、イロモノ風味が感じられたからです。
とんでもありませんでした。
見た目に反して(?)装着感は極めて良好。音色は暖かく精密で、音場も広め。レンジも広く、バランスもフラットです。基礎性能がかなり高いモデルです。
なんというか、"The 高級ヘッドフォン" という感じです。弱点がなく、高いレベルでまとまっています。一方で、特長が薄いため、どんなジャンルでも聴けるけど、どれもそこそこな魅力になってしまいます。万能とみるか、器用貧乏とみるか。
とはいえ、かなり高い性能を持った、素晴らしいヘッドフォンであることは間違いありません。
その他
STAXのブースで話をしたところ、フラグシップのドライバを作ろうとしているとのことでした。007tAや727Aの上のモデルになるようですが、とんでもない値段になるのは避けたい模様。出るのが楽しみです。
またLUXMANのブースに行って、プリアンプの導入を検討していると言ったところ、DA-250をなぜか強くプッシュされました。DA-06を持っていると言っているのに。不思議です。
まとめ
そんな感じで、今回は非常に魅力的な新作が多かったと思います。特にHE-1、Dream、W80などは他と一線を画した特長を持っており、それぞれの色が出ていて面白かったです。
個人的にはついにKSE1500を買ってしまいご満悦です。
ヘッドフォン祭2016春に行ってきました!
さて、半年に一度の祭典、ヘッドフォン祭2016春に行ってきました。毎度の通り、会場は中野サンプラザ。
今回は12時を過ぎてから会場入りしました。さすがにこの時間だと長蛇の列ということも無く、すんなり上のフロアに上がれました。
今回の物販は、ShureのKSE1500がかなり安値で売っていたので思わず買ってしまいそうになりましたが、なんとか我慢しました。前回思いっきり散財しましたからね。
以下、気になった商品試聴レビュー
Ultrasone Tribute7
かつての名器、Edition7の復刻版のようなモデルです。会場ではTribute7とEdition7が並べて展示してありました。限定777台とのことですが、Ultrasoneの場合、Edition9といい、Edition5といい、信憑性はまったくありません。
見た目は色以外ほとんどEdition7と一緒です。今度のは青というか、紺色が基調。ケーブルは白く、撚ってあるのも違うところです。
音色ですが、手持ちのEdition9とほとんど同じ音がします。低音はタイトでありながらボリュームがあり、非常に魅力的。高音の突き刺さり方が少し大人しくなった気がします。分解能は相変わらず高いですが、音場などはこのレベルだと少し狭く、明確さにも欠けます。
機能として、ケーブルが着脱式になっているので、バランス化が容易です。2本のケーブルが付属するようですが、両方ともミニプラグなのはちょっと減点です。長い方は標準プラグで良かったのでは?
また、装着感が少し良くなっていた気がしました。眼鏡をかけていても、そんなに痛くありませんでした。
Sennheiser HD800S
Sennheiserのフラグシップ機、HD800のマイナーチェンジ版。
ドライバは変わっていないらしく、やはりHD800と同じ音がします。高音を抑えて、さらにフラットに近づけたとブースの方は言っていましたが、微少な差異です。
こちらはバランスケーブルとアンバランスケーブルが付属。HD800にバランスケーブルを買い足すよりは安いそうですが、すでにHD800を持っている人が改めて買う必要は無い気がします。
今回もカスタムIEMを多く聴きました。以下、代表的な物。
JH Audio Layla
カスタムIEMで有名なJH audioの、試聴したのはユニバーサルモデル。現在売られているイヤフォンの中では、ほぼ最高価格ではないでしょうか。
バスブースト機能がありますが、以下はすべてオフの状態でのもの。低音を持ち上げても、バランスは変わりますが、音が良くなる印象はありません。
かまぼこ形のバランス。音の分離は悪くはないですが、値段を考えると少し苦しい。音色はかなり厚みがある感じがしますが、音場が整理されていないので少しごちゃっとした印象があります。一つ一つの音がすごく魅力的なのですが……。
ちょっとアンバランスな感じがしますが、LaylaはLaylaだけの音を鳴らしています。癖が強い分、堪らない人には換えが利かない機種になりそうです。
Anzieも試聴しましたが、こちらの方がもっとモニタ寄り。フラットですし分離も良いのですが、『普通のハイエンドイヤフォン』っぽい感じがします。
FIt ear aya -snow-
こちらもカスタムIEMの大手。Fit earの新製品(?)です。
Shureのイヤフォンみたいな音がします。低音寄りのバランスで、音場は狭め。音圧が高く、迫力はあります。
価格帯にも近いAirの方が魅力的ではないかと個人的には思います。Fit earは全体的に高音の抜けが良くないように聞こえるのですが、Airは出色の出来だと思います。
ONKYO IE-C3
天下のONKYOが出すカスタムIEMです。ドライバ数によってC1,C2,C3があります。
C3はかなり好印象の出来です。全体的に派手な印象がする、珍しいカナル型。
バランスはややドンシャリ系。とはいえ、低音の膨らみは下品というほどではなく、高音もしゃりつかず綺麗に伸びます。音場や分離もそこそこ悪くありません。また、能率が非常に良いのか、音量が大きいと思います。
カスタムIEMでこんな元気な音は他に例を見ないというか、PS1000みたいなイメージでしょうか。あそこまで暴れ馬ではないですが。
また、IE-C2の方も聴いてみました。こちらはもう少しフラット寄り。特徴はないですが、基本性能の高さはこちらの方が判りやすいかも。
まとめ
そんな感じで聞いてきました。Tribute7はEdition7/9を持っていない人や、バランス化したい人には良いと思います。持っている人が改めて買う必要は無いと思いますが。
カスタムIEMはさらに群雄割拠という感じになってきましたが、個人的にはFit ear Air か ONKYO IE-C3 が音質、価格帯を加味すると魅力的なのではないかと思います。もちろん、K3003 + UM56 も、同レベルからそれ以上の魅力を持っています。
もちろん、予算が許せばKSE1500が欲しいところではありますが………。
SRM-727Aのボリュームバイパスレビュー(PM-15S1をプリアンプ利用)
STAXのドライバ、SRM-727Aをボリュームバイパスで使用したレビューです。
プリアンプとしてMarantzのPM-15S1を使用。イヤースピーカーはSR-009Aです。DACはLuxmanのDA06、ということで毎度の環境です。
前回の記事で書いたとおり、秋のヘッドフォン祭 2015でSTAXのSR-009AとSRM-727Aをセットで購入しました。恐らく、現状手に入るヘッドフォン環境としては最高クラスのもので、かなり満足していました。
SRM-727Aのボリュームバイパス機能
しかし、SRM-727Aにはボリュームをパスする機能がありまして、あまり評判のよくないボリューム部分をスルーすることができます。前段にプリアンプを繋いでボリューム調整をし、SRM-727Aをパワーアンプのみとして使うわけですね。
そんなわけでプリアンプを導入しようと思ったのですが、現状プリメインとして利用しているSoulnoteのsa1.0をスピーカーと併用するためには、毎回繋ぎ替えることとなり現実的ではありません。かといってスピーカーを使わないわけにもいきません。
プリアンプとしてのPM-15S1
そこでMarantzのPM-15S1を知り合いから譲り受け、プリアンプとして繋いでみることにしました。少し古い型ですが、アナログ機器で技術的にも枯れていますし問題はないでしょう。ちなみにPM-15S1にはスピーカー端子への信号をカットする機能がついていて、繋ぎ替えずともこれ一台でスピーカー用プリメインとヘッドフォン用プリアンプとして使用できます。
ま、sa1.0を気に入っているので、結局使い分けていますが。
ボリュームバイパス設定と接続
SRM-727Aのボリュームバイパス機能を有効にするためには、ケースを開ける必要があります。付属の六角レンチで側面のネジを4カ所開け、内部のスイッチを切り替えます。取説にちゃんと記載されているので問題ないでしょう。設定が終わったらケースを元に戻します。
PM-15S1のプリアウト端子からSRM-727Aのアナログインに繋ぎます。PM-15S1にはRCA端子しかないため、アンバランスでしか接続できません。ケーブルはAVCTのST-1Q-PCUHDを使用しました。
なんとなく怖いのでPM-15S1とSRM-727Aのボリュームを両方とも限界まで下げた後、スイッチを入れます。音を出してから、ボリュームを調整。PM-15S1のボリュームを上げると、音が聞こえて来ます。SRM-727Aのボリュームを幾ら回しても音量に変化はありません。無事、接続は成功。
音質
さて、肝心の音質です。
元々のSRM-727A → SR-009Aでも、十分過ぎるほど高い音質を得られていたのですが、さらにパワーアップしました。一聴して違いが解るほどの変化です。
一番大きく変化したのは低音の質感です。SR-009Aは元々制動が良いヘッドフォンですが、さらに精密さを増した印象があります。中音~高音についても、音の滑らかさがさらによくなりました。ただでさえ綺麗な音色がさらに一皮剥けたような感じです。
バランスについては変化していないように思います。音場についてはさらに横に広がりました。身体全体が包み込まれているような感覚です。
総評
全体的に音は良くなりました。ただ、ある程度以上のプリアンプで無いと逆効果になるような気がします。逆に言えば、PM-15S1よりさらにランクの高いプリアンプを使用することで、さらなるレベルアップをする可能性もあります。
とはいえ、投資をするとしたら最後になるでしょう。SR-009A、SRM-727Aと高レベルのDACがあって、そこからさらに、と言う方向けだと思います。
SR-009 + SRM-727Aのレビュー(STAX)
STAXのフラグシップイヤースピーカ、SR-009と専用ドライバSRM-727Aのレビューです。
STAXはコンデンサ型のヘッドフォンで有名な日本のメーカーです。(今は中国資本になったとのことですが)STAXはコンデンサ型ヘッドフォンのことを、イヤースピーカーと称しています。一般の、ダイナミック型とは違うぞ、との矜持でしょうか。
先日の記事に書いたとおり、秋のヘッドフォン祭でメーカ調整品が売っていたので、SR-009を買ってしまいました。セールになっていたSRM-727Aも同時に購入。衝動買いとでも言うのでしょうか。
SR-009はSTAXのイヤースピーカの中ではフラグシップのモデルとなります。長らくΩIIとして人気を博していたSR-007(A)のさらに上をいく最高峰の音質で、STAX製品に限らず、現存するヘッドフォンの中でも一二を争うレベルでしょう。
以下のレビューの環境は、PC→DA-06→SRM-727A→SR-009となります。DA-06とSRM-727Aの間のケーブルはAVCTのST-1Q-PCUHDを使用しました。また、電源ケーブルも変更しています。
コンデンサ型ヘッドフォンのメリットとデメリット
ついこの間まで、コンデンサ型のヘッドフォンメーカとして製品を世に出しているのはSTAXくらいだったと思います。Shureがコンデンサ型のイヤフォンを出すと発表してちょっとびっくりもしましたが。
よく言われるメリットとしては、振動板が軽く、音の再現性が高いことです。
一方、デメリットとしては、専用のドライバユニットが必要なことでしょう。プレーヤに直で繋ぐだけでは音が出ないので、間に機器が一つ増えることになります。ポータブル用途ではそれだけで影響が大きいですし、据え置き型でも、各社互換性が無いと考えると、導入するにはかなり勇気が必要でしょう。
SR-009の音質
音質としては最高です。
それ以外の言葉が見つからないほどです。
何より特筆すべきは繊細さ。音の再現性は極めて高く、楽器や声が瑞々しく伝わります。本当に、生音と聞き間違えるようなレベルです。ここまでのレベルはヘッドフォン・スピーカーを合わせても聴いたことがありません。
バランスは完全にフラット。どこも強調されていません。低域から高域まで滑らかに出ます。また、超低域もヘッドフォンと思えないほど沈み込みますし、高音もシャリつかずに伸びきります。まさに「フラットで広帯域」を体現しています。
音場も広く、横幅も奥行きも感じられます。ヘッドフォンの中では最高クラスでしょう。横幅に関しては、HD800のバランス接続に比べるとさすがに分が悪いですが。
SRM-727Aとの接続ですと、どこかで「究極の普通」と書かれているのを見たことがありますが、言い得て妙だと思います。特長は強くなく、けれど最高の音です。
SR-009に接続するドライバ
STAX製のドライバなら基本的に互換性がありますが、SR-009に繋げるとなると、SRM-007tかSRM-727Aのどちらかというのが一般的でしょう。ちょうどヘッドフォン祭に出店していたSTAXのブースで、SR-009を繋ぎ替えて購入を決定しました。
SRM-007tは真空管抵抗です。中音域から高音域にかけて非常に華やかな印象があります。低域も少し膨らむ感じがします。音楽的にとても魅力的である一方、ややノイジーに感じることもあります。
SRM-727Aは石の抵抗です。こちらはかなりフラットな印象。ノイズ感も少なく、特長がまったくないと言っても過言ではないほどの薄味です。また、ボリュームをスルーすることが出来ます。
ブースで両方を試聴し、SRM-727Aを選択しました。007tの高音が少しわざとらしく感じたのと、全体的にフラットな音質が好きだからです。しかし、これは好みの問題かと思います。
総評
世界的に見て、一二を争うヘッドフォンだと思います。再現性をはじめとした基礎能力で群を抜いています。一方、特長が薄いため、キャッチな魅力では無いかもしれません。しかし、一時期納品まで半年以上待たされていた、とのことですから、矢張り魅力は伝わっているのでしょう。
コンデンサ型であるため、専用ドライバが必要となり、導入への障壁は高いのですが、それだけの価値があると思います。
ヘッドフォン祭2015秋に行ってきました!
もう毎度のことですが、秋のヘッドフォン祭りに行って来ました。場所はいつも通り中野サンプラザ。いつも通り、エレベータは大渋滞です。
今回は開場時刻、11時頃に中野に到着しました。めぼしいものはすぐに売り切れてしまうだろうと思いながらも、一応物販の整理券を貰っておきます。
会場をぶらぶらしていたら整理券の集合時刻になったので、物販会場に行ってみると、なんとSR-009のメーカ調整品がまだ残っていました! しばし悩んだものの、結局買ってしまいました。SRM-727Aと一緒に。衝動買いって怖いですね。すごい出費です……。
さて、以下気になった商品試聴レビュー
Shure KSE1500 / SHA900
さて、高級イヤフォンの先駆け、Shureからなんとコンデンサ型のイヤホンの登場です。コンデンサ型なので、もちろん専用のドライバが同時発売です。こちらはポータブル対応、DAC内蔵です。Shureと言えばBA型という印象だったので、意外な発表でした。
さて、並んでKSE1500を試聴しようと思いましたが、SHA900も含めiPod Classicには対応していないとのこと。そのため、SU-AX7のアナログ出力から、Line inでの試聴となりました。やはり、Classicはそろそろ引退ですかね……。あと、ブースの人からiphoneをお借りしてデジタル入力も試してみました。
音質的には素晴らしいの一言です。イヤフォンでこの音質はちょっと他には存在しないと思います。手持ちのK3003 + UM56よりもはるかに上です。
バランス的には既存のShureっぽさはあまり感じませんでした。SE846やSE535は音色は魅力的なのですが、低音が膨らんで高域の伸びが今一つな感じが好きで無かったのですが、KSE1500に関しては上から下までかなりフラットで、帯域もイヤフォンと思えないほど広いです。
音色も非常に魅力的で、かなり繊細な印象を受けます。音場もイヤフォンにしては広め。奥行きはそれほど感じませんが、左右は広く、明確です。
恐らく、現状で最高のイヤフォンだと思います。もちろん、お値段もけっこうなものですが、それに見合った音質だと感じました。
FitEar Air
カスタムの老舗、FitEarから、ハイブリッド型が発売となりました。FostexのダイナミックドライバとBA型1基の構成とのことです。
個人的な印象ですが、ダイナミック型は音色が豊かで魅力的ですが、帯域の狭さ、音場の不明瞭さがネックとなります。一方、BA型はマルチドライバにより、レンジの広さはカバー出来ますが、一つ一つの音色は薄っぺらいものになりがちです。
K3003以降、ハイブリッド型のイヤフォンが市場にいくつも出てきましたが、それぞれのドライバの強みを生かせている機種は少数であるように感じます。やはり調整が難しいのでしょうか。
しかし、今回のAirはかなり好印象です。全音域において、ダイナミック型の豊かな響きの音色が楽しめます。また、ダイナミック型だと、たとえば、IE8やDita のAnswerであったような、やや高域の伸びが足りない印象があったのですが、そこをBAのユニットで上手くカバーしているように感じます。音場の広さも、まずまず良好で、明確さは出色の出来。
価格帯も、カスタムでありながら、K3003と同程度ですし、ベストセラーになるのではないでしょうか。それだけの実力を秘めていると思います。
さて、今回はこの2製品の印象が非常に良く、実りの多いフェスティバルだったと思います。後は、配送してもらっているSR-009 + SRM-727Aが届くのを待つばかりです。
UM56のレビュー(Westone)
Westoneのカスタムイヤーチップ、UM56のレビューです。
Westoneと言えば、カスタムIEMで有名な老舗メーカです。昨今のイヤフォン熱の高まりと共に新規参入するメーカも増えてきましたが、実績という点で、Westoneを上回るところは無いでしょう。
そんなWestoneが出しているのがUM56です。これはイヤフォンでは無く、カスタムイヤーチップです。つまり、カナル型イヤフォンの耳に入れる部分だけを、耳に合わせてオーダメイドで作成する物です。
一般的なカスタムIEMに比べ、耳に入れる部分のみだけであるため、装着感や遮音性に関しては若干劣るかと思われます。一方、大抵のカナル型イヤフォンで使用できるため、ユニバーサル型のお気に入りがある場合には、非常に魅力的な選択肢になります。
作成まで
さて、そんなわけでお気に入りのK3003用にUM56を作成しました。お店に行って、耳型を取り、その場でオーダしました。耳型を取る際に、口を開け閉めすると、耳の中が動いてしまうらしく、何かを咥えたまま、五分ほど待ちます。なるべく口を開けて取った方がフィット感は良くなる、と説明を受けて、大きめの塊を咥えてとりました。
オーダメイドだけあって、納品まで1ヶ月ほどかかりましたが、仕方が無いところでしょう。その場でざっと装着感などをチェックしましたが、特に問題は感じませんでした。
装着感など
いままで使っていた、K3003+Spiral dot (L) 環境との比較です。
装着感は、やはり圧倒的に良いです。耳にしっかりフィットしていて痛くも無いし、激しく動いてもずれません。また遮音性も抜群に良く、音漏れもまったくありません。これだけでも買う価値があるくらいです。
逆に、外の音は殆ど聞こえなくなるため、安全には注意が必要そうです。また、装着にはややコツが要ります。
音質
肝心の音質です。全体として上品になるようなイメージでしょうか。
バランスとしては、Spiral dotに比べ、ロー上がりになります。ただブーミーに膨らむ感じは受けません。高音は全体的に量は少なくなりますが、抜けが悪くなることはないです。K3003の良い部分を伸ばしつつ、弱い部分も補ってくれる印象。
音の分離・波形の再現性はかなり向上します。元々、K3003は分離の良い機種ですが、さらに磨きがかかる印象です。
音場に関して定位も明確になりますが、左右の広がりはやや狭まります。逆に奥行きは少し広がった印象。鼓膜に近づくからでしょうか。
総評
まず、音質以外の装着感・遮音性だけでかなり快適になります。また、音質については、使う機種との相性も大きいとは思いますが、かなりのレベルアップが見込めます。
ただ、UM56はそれなりのお値段なので、元々が良いイヤフォンで無い限り、選択肢にはならないでしょう。イヤフォン自体をグレードアップした方が、大抵は効果は大きいと思います。
ユニバーサルのフラグシップモデルでお気に入りがあるなら、是非作るべきだと思います。
iPurifierのレビュー(iFi Audio)
iFiのUSBノイズフィルタ、iPurifierのレビューです。
以前、USBケーブルで音は変わるのか?と題して記事を書きました。その後、iUSB PowerとGeminiのレビューも掲載しましたが、今回はそれに続き、iFi製品のUSB関連機器のレビューです。
実は先月、シンガポールに出張に行く機会があり、その際に買ってきたものです。iFi製品はシンガポールの方がかなり安く、iPurifierについても、日本の最安値より5000円ほど安いです。しかも、免税措置も受けられるため、さらにお得です。
結論から言うと、それなりに効果はあります。
試聴環境は
PC → Gemini (+iUSB Power)→ iPurifier → DA-06 → X-HA1 → HD800(バランス化)
となります。
使用方法
ただのフィルタなので、USBケーブルと機器の間に挿すだけです。と、いうか、こんな機器があるなら、Geminiにデフォルトで備え付けてくれれば良いと思うのですが。ちょっとあざとい?
音質の変化
さて、具体的にどう変わるのかというと、音の明瞭性のアップです。細かい音が聞き取れるようになりますし、音場も明確になります。みずみずしさが増し、リアル感が出てきます。
ただし、効果の程はやはりアクセサリー並です。スピーカーやDACを変えたときほどの変化は出ません。あくまで、ちょっとブラッシュアップしてくれる、程度です。まあ、繋ぐ先がDA-06というしっかりした電源を持つ機器なので……。
ノイズ感の現象?
「ノイズフィルタ」という名称なので、ノイズ感が減少するかと思っていましたが、あまりそういう効果は出ません。(元々ノイズの少ない環境だと言うこともあると思いますが)フィルタでノイズ感が減少するのは恐らく、アナログ段の部分でしょう。バスパワーで駆動するDACなどに使用すればそういう効果も出るかも知れません。
総評
よく出来たアクセサリーです。ピントがしっかりと合うようなイメージでしょうか。波形の再現性が高まります。
PCオーディオを構築している人は、使ってみるべき機器だと思います。